プロアクティブ療法とは

アトピー性皮膚炎の治療では、炎症を抑える治療で寛解となった後、見た目にほとんど異常がないように見えても潜在的な炎症が皮膚の奥で残っている状態がしばらく続いています。ここで治療を一旦やめてしまう人が多いのですが、この状態で治療を中止してしまうと、すぐに炎症が再燃してしまいます。プロアクティブ療法とは、皮膚炎が軽快した後もステロイド外用薬などの使用を中止せず、しばらくの間お薬を継続する方法です。それにより、皮膚炎やかゆみの改善状態が長期間維持することができ、再発、再燃(ぶり返し)の頻度や重症化が減ることが期待できます。プロアクティブとは「先を見越した」「予防的な」という意味でとらえられています。反対に、痒いときに塗る、痒くなくなったら薬を止める、というのが「リアクティブ療法」です。軽症のアトピー性皮膚炎では、リアクティブでも十分なことも多いです。

まずは寛解を治療目標にしよう

アトピー性皮膚炎の治療には目標が大切です。

それは、「症状がない、もしくは症状があっても軽微で、かつ日常生活に支障がない状態」つまり「寛解」を目指すことが大切です。寛解が達成できると、とても楽です。その目標をしっかり医師と二人三脚で達成していきたいものです。

寛解を維持するために

多くの方は、塗り薬を塗ったら良くなるけど、やめたらすぐ再燃する、という体験をお持ちのことと思います。そのスパイラルに陥ってしまうと、「やはり良くならない」「治療しても意味がない」と思われてしまう患者さまもいらっしゃいました。そして治療を中断してしまう方もおられたようです。

「よくなった」と感じた時点でも、皮膚の奥ではまだ炎症がくすぶっていることが多いです。自己判断で外用頻度を減らしてしまうと、皮膚症状が再燃してしまいがちです。
そこで、当院では、中等症~重症の患者さんに対して、プロアクティブ療法と同時に、TARCという物質を検査しております。これはアトピー性皮膚炎の症状に応じて増減することが知られています。TARCが正常範囲内にあることが寛解に向けたひとつの数値目標となるかもしれません。

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021においても、プロアクティブ療法は「湿疹病変の寛解維持に有用かつ比較的安全性の高い治療法である」と記載され、推奨度1,エビデンスレベル A と高く推奨されています。

プロアクティブ療法のやり方

まず、第一段階として、いちばん大切なのは「寛解導入」すなわち皮膚をツルツルの状態にしてしまうことです。そこではステロイド外用薬を1日2回、きっちりFTUを守って塗っていくことが大切です。光線療法をやる、デュピクセントの注射やJAK阻害薬の内服も重要です。ゴールは痒みが止まることではなく、寛解することですから、しっかりツルツルの状態を作るまで頑張っていきましょう。寛解導入のためにはバックグラウンドとして保湿外用薬やスキンケアの継続を行ってくことも大切です。

プロアクティブ療法を行う上で大切なこと

一度プロアクティブ療法についてアンケートを取ってみたことがあります。これは、患者さんたちがどのようにプロアクティブ療法を実践しているのか、めんどくさくないのか、などを知りたかったからです。アンケートには以下のようにお答えをいただきました。

プロアクティブ療法はかゆみのあったところ、荒れていたところにもステロイド外用薬をはじめとしたお薬を塗ることが大切になります。長い期間ステロイドを塗ることへの不安もあると思いますが、20週間実施しても目立った副作用はなかったことも示されています。

プロアクティブ療法はめんどくさい

皮膚症状が寛解していると、お薬を塗るのはめんどくさいと思います。先程のアンケートでも、「やったふりしている」人も数人おられます。これは仕方ないかと思います。ただ、プロアクティブ療法の目的は寛解を維持することですから、荒れていたところにも塗っていくことは、再発防止のためには大切です。アトピー性皮膚炎ガイドラインにはこのようにも記載されています。「外来での外用療法が主体となるアトピー性皮膚炎では、患者やその家族は治療の主体である。」たしかに、プロアクティブ療法はめんどくさいですし、早く「塗らなくてもいい状態」になりたいはずの患者さんが頑張って毎日塗ることにはとても根気がいるはずです。その頑張りを、少しだけでも後押ししていきたいです。

プロアクティブ療法 よくある質問

Q プロアクティブ療法のメリットはなんですか?
A ステロイドの使用量をなるべく少なくして寛解を維持することです。

Q プロアクティブ療法をやっていてもかゆいのですが。
A まだ寛解に至っていない状況です。まず寛解導入をやり直しましょう。

Q プロアクティブ療法を行っている時に保湿は行ったほうが良いですか?
A ぜひ毎日行ってください!

Q プロアクティブ療法では、いつまでステロイドを塗らないといけないのでしょうか?
A これには、実は明確な答えがないのです。寛解導入が成功したあと、ステロイドを徐々にタクロリムスやデルゴシチニブなどの抗炎症外用薬にシフトしていき、結果としてステロイドを卒業していく、というのが現実的な方法と思います。

Q ずっと落ち着いていたのに、急に痒くなってきました。
A 再び寛解導入を目指してステロイド外用薬をしっかり塗る、光線療法を行う、などの治療を行います。

Q 痒くなくなっても乾燥しているところがあります。
A 皮膚炎が治りきっていないところも多い可能性があります。しっかり治ると肌がツルツルとした柔らかい質感になってきます。

Q 痒くなくなっても乾燥しているところがあります。
A 皮膚炎が治りきっていないところも多い可能性があります。しっかり治ると肌がツルツルとした柔らかい質感になってきます。

参考文献

  1. 佐伯秀久他.  アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021 . 日皮会誌:131(13),2691-2777,2021