2020年12月20日、福岡県臨床皮膚科医会、マルホ株式会社の共催でweb上での乾癬市民公開講座を開催いたしました。院長は総合司会を担当いたしました。福岡からの発信ですが、全国から多くの方がアクセスしてくださいました。視聴できなかった方も多いと思いますので、講座の内容を紹介したいと思います。

講演は九州大学皮膚科の辻学先生にお願いしました。乾癬だけでなく、アトピーや真菌感染症、ダイオキシンなど臨床的にも学術的にも幅広い知識を持った先生です。

コロナで話題の手荒れについて、正しい手の洗い方や手荒れ対策、そして手荒れと思っていてもアトピー性皮膚炎、水虫、掌蹠膿疱症、乾癬などいろんな病気による症状がベースになっていることがあることをまず紹介してくださいました。

次に、乾癬についてです。いろんな治療法があることや、ライフスタイルや目標に応じてそれぞれの治療を選択することの大切さ、そして乾癬が関節炎やメタボリック症候群、うつなど様々な合併症があることをご紹介くださいました。

多くの方から素晴らしい講演だったとの感想を頂きました。

パネルディスカッションは安元慎一郎先生、ふくおか乾癬友の会の田中会長にも加わっていただき、「医師と患者のより良いコミュニケーション」をテーマに取り上げました。

塗り薬をずっと塗ってるけど、うまくいきません。

ディスカッションで話した内容を抜粋して掲載します。

・治療がうまくいかないとき、いろんな悩みがあります。しかし、それを患者さんがうまく訴えられるかどうか、そして医師がうまく汲み取れるかどうか。なかなか難しいところです。

・患者さんは遠慮して「治療はうまくいってます」と言い、軟膏をいつものようにもらいますが、あまり塗っていないので軟膏が溜まっていく。そんなシチュエーションは多いと思います。

・通常、皮膚科医は飲み薬2週間分、塗り薬も2週間でちょうど使い切れる位の量を計算して出すことが多いです。それで余っている時はあまり塗っていないことを予想します。

・塗っていないことを正直に医師に伝えていただいても構わないのです。良くなっていない理由が塗っていないことであれば、逆に医師は安心します。ちゃんと塗れば良くなるかもしれないから。

・ちゃんと塗っていて、なおかつうまくいかない時は治療を見直す良いタイミングです。その際は大切なイベントなど治療の目標を決め、どういう状態になりたいのかを主治医とよく話しましょう。そして治療の目標を主治医と患者さんはしっかり共有して二人三脚で治療に向き合うのが良いです。

・医師と患者のコミュニケーションはすぐにうまくいくものではありません。ただ、お互いに歩み寄ることが大切かと思います。「乾癬を治したい」という気持ちは一緒のはずです。

・治療やコミュニケーションがうまくいかない時、「医者が悪い」「患者が悪い」と言わないことも大切です。人のせいにしても、乾癬は治りません。それらの間をどう解決していくか互いに考えることが大切です。

会期中にいただいた質問についての回答

乾癬に推奨される温泉の泉質について、またよくない泉質、温度について知りたいです。またお風呂の入浴剤で推奨されるもの、よくないものについてお教えください。

乾癬の方が温泉に入ることは、決して悪いことではありません。すべての乾癬患者さんに推奨される泉質、またはよくない泉質というものはありません。九州にもたくさんの温泉がありますので、いろいろ行ってみられるとよいでしょう。硫黄泉など乾燥するような泉質の場合は、最後にシャワーで身体を流してから上がったほうが良いと思われます。北海道には豊富温泉という乾癬患者さんの聖地とされる温泉があります。北海道の乾癬患者会ではツアーを行うこともあります。コロナが落ち着いたらそちらもどうぞ。温泉はあくまでも楽しむスタンスであったほうが、乾癬を良くするためにも良いと思います。乾癬の治療において、温泉が主ではいけません。リラックスするためのオプションとして捉えたほうがよいです。また、入浴剤はお好みで大丈夫なのでは、と思います。

長年、乾癬が、治ったり悪化したりを繰り返しています。
私は、過去に癌を経験しているため、免疫を抑えるお薬等の治療はできず塗り薬のみの治療を続けています。
尋常性乾癬の人には、グルテン不耐症の人が多いと、ネットからですが、情報を見つけ、藁をもすがる思いでグルテンを完全とは言えませんが、極力摂取しない生活に変えました。
3ヶ月過ぎた頃から全く薬を塗らずに済むようになりました。
時たま、ピザなどを少し食べてしまうと、数日経った頃
頭皮に痒みが出始め、乾癬ができ始めるを繰り返しています。
医学的に何かグルテンについてありますか?
私のただの思い込みでしょうか?

乾癬がずっと続くのはとても大変だと思います。また、癌を経験されるなどとてもつらかっただろうと思います。
まず、癌の既往があったとしても、塗り薬以外の治療はたくさんあります。症状に応じて治療をステップアップすることができます。
次に、グルテン不耐症という概念は、特に確立されたものではありません。乾癬においてのデータは乏しいです。米国国立乾癬財団(national psoriasis foundation)からの推奨文では、血清マーカーにおいてグルテン感受性陽性の乾癬患者には、グルテンフリー食のみを弱く推奨すると言われています(Ford AR et al: JAMA Dermatol 2018)。もちろん思い込みと断定することは出来ませんが、グルテンフリーは絶対ではありません。皮膚の症状とよく向き合いながら、また栄養のバランスを考えながら注意深く食事をされてはいかがでしょう。

あ、今回「乾癬は感染せんバイ!」って言ってなかった。