日野皮フ科医院

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産後は乾癬が悪化しやすい時期です。免疫系が妊娠中の状態から通常に戻ることで、悪化する方が多くいらっしゃいます。授乳を続けながら乾癬の適切な治療を受けることは可能ですが、薬の種類によって安全性が大きく異なります。

授乳中の乾癬治療では、
「母体の症状コントロール」と「乳児への安全性」の両立が重要です。

乾癬は慢性炎症性疾患であり、放置するとQOL低下だけでなく、
全身炎症に伴う合併症リスクもあるため、適切な治療継続が推奨されます。

本ページでは、授乳中の乾癬治療について治療の選択肢をカテゴリ別に解説します。

塗り薬

保湿剤

最も安全な選択肢で、副作用の報告はありません。ヘパリン類似物質、ワセリン、尿素製剤など、まずは積極的に使用して良いと思います。

ステロイド外用剤

ステロイド外用剤は基本的に使用可能です。授乳直前に乳頭の付近に薬を塗らない、薬が残っていたら拭き取る、などの対応はしておいた方が望ましいと思います。塗り薬の母乳への移行はごくわずかで、通常の使い方ですと無視できるレベルです。

ビタミンD3外用薬

使用可能ですが、安全量の範囲内で使用してください。使用上限は薬によってそれぞれ違いがあります。健康成人の使用上限は、オキサロール®は1日10g、ドボネックス®は1週間90g、ボンアルファハイ®は1日10gです。主治医と用量を確認しながら使用してください。

配合外用剤

ドボベット®、マーデュオックス®が使用可能です。配合されているそれぞれの薬剤がステロイド、ビタミンD3なので、基本的に使用可能です。

タピナロフ(ブイタマー®クリーム)

タピナロフは、近年登場した非ステロイド外用薬であり、AhR(aryl hydrocarbon receptor)を介して抗炎症作用やバリア機能の改善をもたらす塗り薬です。新しい薬であり、データが少ないため慎重に使用する必要があります。ヒトに外用した際の乳汁への移行性、乳児への影響はデータがありません。ただし、経費吸収は限定的であり、理論上リスクは低いとされています(1)。データ不足のため、できれば使用を回避することが望ましいです。

塗り薬は概ね安全に使えますが、新しい薬の安全性はよくわかっていませんので、ステロイド、ビタミンD3を中心に使用していくのが良いでしょう。

光線療法

通常、ナローバンドUVBやエキシマライトを使用します。授乳中の乾癬治療において、外用療法の次に推奨される治療法です。母乳への影響はなく、安全に使用できます。中等症〜重症の患者さんに特に有用です。治療を頻繁に行う必要があるのが難点です。高い線量で照射を行う際、葉酸が低下する可能性が示唆されていますので、注意が必要です(2)。

飲み薬

飲み薬には、絶対禁忌のもの、安全のため避けた方が良いものがありますので、使用には注意が必要です。

アプレミラスト(オテズラ®)

母乳への移行と乳児発育への影響が否定できないため、授乳中は使用を避けるべきとされています(3)。国内では有益性が安全性を上回る時に使用可能、とされています。

シクロスポリン

必要な場合は使用を検討できますが、母乳への移行が起こります。そのため、原則使用を避けるべきとされています(3)。

JAK阻害薬

現在、デュークラバシチニブ(ソーティクツ®)が尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症に使用でき、ウパダシチニブ(リンヴォック®)が乾癬性関節炎に使用できます。授乳中の安全性データがほとんどなく、現時点では使用を避けることが望ましいです(3)。

メトトレキサート

催奇形性(胎児の中枢神経障害、頭蓋骨異常、四肢の成長障害などのリスク)が高い薬です。母乳に移行することが確認されており、授乳中は絶対禁忌です。服用中止後、約3ヶ月は授乳を避けるべきとされています(3,4)。

エトレチナート

強い催奇形性があり、長期間薬剤が体内にとどまることが確認されています。そのため授乳中は禁忌です(3)。

生物学的製剤

中等症〜重症で上記治療が不十分な場合に考慮します。生物学的製剤は高分子タンパク質のため、母乳中に移行しても消化管で分解される可能性が高いとされます。ただし、製剤により安全性の根拠は異なります。

セルトリズマブペゴル(シムジア®)

Fc領域を持たない抗TNF-α抗体製剤で、胎盤・母乳への移行がほとんどないことが複数の前向き研究で示されています。妊娠中・授乳中を通じて最も安全性エビデンスが豊富な生物学的製剤です。

その他のTNF阻害薬

インフリキシマブ(レミケード®、インフリキシマブBS)、アダリムマブ(ヒュミラ®、アダリムマブBS)が乾癬に対して使用可能です。母乳中への移行量は少量ですが、セルトリズマブほどのエビデンスはありません。明確な医学的必要性がある場合、利益とリスクを十分に検討したうえで使用を検討します。

IL-17, IL-23阻害薬

妊娠中の催奇形性シグナルは現時点では認められていませんが、授乳中のデータは不十分です。現時点では慎重な姿勢が必要です。

まとめ

授乳中の乾癬治療は「治療の有効性」と「乳児への安全性」を個別に評価する必要があります。
•   乾癬は授乳に禁忌ではありません。乾癬、母乳を通じてお子さんに伝わることはありません。乾癬は感染せんバイ!
•  産後に皮膚症状が悪化することは約65%の患者さんに起こると言われています。特に出産後の数週間以内に悪化することが多いため、早めに皮膚科にご相談ください。
•  授乳を続けながら治療できる薬剤は多くあります。保湿剤・外用ステロイド・NB-UVBを中心に治療を進めることができます。
• 授乳を中止すれば治療の選択肢は大幅に広がります。授乳の継続・中止は医師と相談のうえ、ご本人が決めてください。

参考文献

  1. Tapinarof Drugs and Lactation Database (LactMed®) [Internet].
  2. El-Saie LT et al: Effect of narrowband ultraviolet B phototherapy on serum folic acid levels in patients with psoriasis. Lasers Med Sci. 2011 Jul;26(4):481-5. doi: 10.1007/s10103-011-0895-0.
  3. Yaghi M et al: Safety of dermatologic medications in pregnancy and lactation: An update—Part II: Lactation. J Am Acad Dermatol. 2024
  4. Mindsガイドラインライブラリ 8章 妊娠授乳希望者への対応.

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