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2026.04.05

内臓が関係する皮膚の病気が心配になったら

病気について / その他皮膚疾患

このブツブツ何ですか?内臓が悪いんですか?

得体の知れないぶつぶつができたとき、理由がわからないことも多いため内臓からくるものかと心配になってしまうことも多いです。実は、そのような心配が当たっているケースは、それほど多くはありません。 多くの場合、皮膚の症状は皮膚そのものの問題です。

体の内側の病気が皮膚にサインとして現れることも、確かにあります。皮膚は内臓の鏡とも言います。

ただ、今日は、どんな皮膚の変化が体の内側からのサインになりうるのか、 わかりやすくご説明します。

怖がらせるためではなく、正しく知って、早めに気づくために——ぜひ最後までご覧ください。

デルマドローム dermadrome

皮膚を意味する”dermatology”と症候群を意味する”syndrome”を合わせたものと考えられます。その意味は、「皮膚病変と内部臓器の異常ないし全身的代謝異常が病因論的になんらかの関連を有し、現象的には両病変が共存する疾患または症候群」を内臓皮膚症候群と総称する、というように言われています。全身に病変をおよぼす内臓疾患もあれば、内臓疾患の影響で別の皮膚病変ができることもあります。こんな背景から、皮膚科医の中でもデルマドロームという概念については未だ議論があります。まあ、ちょっとした皮膚の病変から重大な内臓疾患を見つけることができたら、皮膚科医はかっこいいよね、と言えるようにちゃんと勉強しておこうね、というくらいの感覚で捉えておけば良いのでは、と個人的には考えています。

まず、今回の記事ではこの定義を深掘りすることよりも、代表的な内臓と関連する皮膚病変を紹介することが大切と考えて紹介していきます。

糖尿病と皮膚病変

もっともよく見られる疾患が、糖尿病と合併する皮膚病変です。高血糖状態が続くと、皮膚の免疫機能・血流・神経機能が低下し、さまざまな皮膚症状が現れます。

主な原因は以下の4つです。それぞれの問題点に応じて多数の皮膚疾患が見られるようになります。複合的に発症することもあります。

  • 免疫機能の低下
  • 微小血管障害(血流の悪化)
  • 神経障害
  • 高血糖による皮膚環境の変化

免疫機能の低下による皮膚疾患

糖尿病の患者さんでは高血糖状態のため自然免疫を中心として免疫担当細胞の機能が全般的に落ちます。水虫(白癬)・カンジダ症(皮膚や粘膜のカビ感染)・蜂窩織炎(皮膚の細菌感染)が起こりやすくなります。「同じ場所に感染症を繰り返す」「なかなか治らない」という場合は、血糖コントロールの状態を疑うきっかけになります。重症化することも多いため注意が必要です。

主な疾患

  • カンジダ症(間擦疹・外陰部カンジダ)
  • 白癬(足白癬・体部白癬)
  • 細菌感染(毛包炎・蜂窩織炎)
  • 癤(せつ)・膿瘍
爪白癬

微小血管障害による皮膚疾患

高血糖は血管に大きなダメージを与え、血液の巡りを悪化させます。その結果さまざまな問題をおこします。

主な疾患

  • リポイド類壊死(necrobiosis lipoidica)
  • 糖尿病性足潰瘍
  • 壊疽(gangrene)

神経障害による皮膚疾患

糖尿病では、主に末梢神経がダメージを受けます。神経が関連するため、感覚の異常により痛みやかゆみがおこることもあれば、進行していくと知覚がわからなくなり、痛みに気づかないこともあります。トゲや割れたガラスを踏んだことに気づかないこともあります。

主な疾患

  • 糖尿病性足病変(神経障害性潰瘍)
  • 胼胝・鶏眼(うおのめ・たこ):神経障害に伴い、痛みに気づきにくくなるため起こります。
  • 皮膚乾燥(xerosis):神経障害にともなって発汗機能低下、皮脂分泌低下がみられるためです。
  • 亀裂(ひび割れ):皮膚の乾燥、
  • かゆみ:原因が多岐に渡ります。神経障害による異常感覚としてのかゆみ、白癬など感染症の症状によるかゆみ、乾燥によるかゆみなどが主なものです。

高血糖・糖化(AGEs)による皮膚疾患

糖やその代謝産物は、そのものが皮膚の構造を変化させます。

主な疾患

  • 糖尿病性水疱(bullosis diabeticorum)
  • 浮腫性硬化症(scleredema diabeticorum)
  • 黒色表皮腫(acanthosis nigricans)
  • 糖尿病性手関節症(cheiroarthropathy)
黒色表皮腫 acanthosis nigricans 首の後ろや脇の下が、黒みがかってざらざらした質感(ビロード状)になる変化です。インスリン抵抗性のサインであり、肥満・糖尿病・多嚢胞性卵巣症候群などで見られます。急速に拡大してくる場合、悪性腫瘍に伴う場合もあるため注意が必要です。

Diabetic Foot(糖尿病足病変)糖尿病の合併症として最も注意が必要な皮膚・組織病変

糖尿病によって引き起こされる足の病変を総称してDiabetic Foot(糖尿病足病変)と呼びます。世界的に重要な糖尿病合併症のひとつであり、適切なケアを怠ると最悪の場合、足の切断(下肢切断)に至ることもある深刻な状態です。

Diabetic Footが起こる3つのメカニズム

  1. 末梢神経障害

足の感覚が鈍くなり、小さな傷や靴ずれに気づかなくなる。痛みを感じないまま悪化するため発見が遅れやすい。

2. 末梢血管障害

細い血管が詰まり血流が悪化。傷の治癒力が大幅に低下し、小さな傷が壊疽へと進行することがある。

3. 免疫機能の低下

細菌や真菌感染への抵抗力が落ち、感染が深部組織・骨にまで及ぶ(骨髄炎)ことがある。

こんな症状には要注意

  • ✓足の傷・潰瘍がいつまでも治らない(2週間以上)
  • ✓足が黒ずんでいる・壊死している
  • ✓足が冷たい・しびれる・感覚がない
  • ✓タコや魚の目が繰り返す
  • ✓爪水虫(爪白癬)が長期間続いている
  • ✓足の変形(ハンマートゥ、シャルコー関節)

📌 皮膚科でできること

Diabetic Footは、内科(糖尿病専門医)・皮膚科・形成外科・整形外科が連携して対応する領域です。当院では、足の潰瘍・難治性の皮膚感染・爪白癬など、皮膚科の視点でのケア・治療を行っています。糖尿病の診断を受けている方は、足の異変に気づいたら早めにご相談ください。

予防のための日常ケア

  • 毎日、足全体を目視・触診で確認する(鏡を使うと足の裏も見やすい)
  • 足を清潔に保ち、洗った後は水分をしっかり拭き取る
  • 保湿クリームで乾燥を予防する(趾間は塗りすぎない)
  • 足に合った靴を選び、素足での歩行を避ける
  • 爪は深爪をしない、自己処置で切り込まない
  • 血糖コントロールを継続する


肝臓・消化器疾患と皮膚症状

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、自覚症状が出にくい臓器です。しかし、肝機能が大きく低下したり胆汁の流れが滞ると、皮膚にわかりやすいサインが現れることがあります。

黄疸―皮膚・白目が黄色くなる

肝炎・肝硬変・胆石・胆道がんなどでビリルビン(胆汁色素)が血液中に蓄積すると、皮膚や眼球の白目が黄色くなります(黄疸)。最初に白目の黄ばみとして気づくことが多く、これは速やかな受診が必要なサインです。

クモ状血管腫―胸・腕に広がる赤い模様

胸や腕の上部に、中心の小さな赤い点から放射状に広がるクモの巣のような血管の模様が現れることがあります(クモ状血管腫)。1〜2個は健常な方にも見られますが、複数・多発する場合は肝硬変のサインとして知られており、手のひら全体が赤くなる「手掌紅斑」とともに肝臓の状態を示す重要な所見です。

皮膚に何もないのに痒い

「皮膚に何もないのに、全身がひどく痒い」という症状は、胆汁うっ滞のサインであることも。胆汁酸が皮膚に沈着することで強い痒みが起こります。皮膚科的には「発疹のない全身の痒み」は内臓疾患を疑う重要なサインであり、肝臓・腎臓・甲状腺・血液疾患などのスクリーニングを行うきっかけになります。

膠原病・自己免疫疾患と皮膚症状

膠原病は、免疫が自分の体の組織を攻撃してしまう疾患群です。皮膚症状が最初に現れることが多く、「皮膚科で膠原病が見つかった」というケースは珍しくありません。

全身性エリテマトーデス(SLE)

両頬から鼻にかけて、蝶が羽を広げたような形の赤みが出る「蝶形紅斑」はSLE(全身性エリテマトーデス)の代表的な皮膚所見です。日光に当たると悪化しやすく、脱毛・口の中の潰瘍・関節痛・強い倦怠感を伴うことがあります。20〜40代の女性に多い疾患です。

蝶形紅斑のイラスト 頬の両側に蝶が羽を開いたような赤い発疹が出ることが特徴です。これを「蝶形紅斑」と呼びます。この発疹は赤色で、通常はかゆみはありません。典型的なものは盛り上がりがあり、発疹のない部分との境目がくっきりします。

皮膚筋炎

眼周囲に紫色の浮腫状の赤みが生じる「ヘリオトロープ疹」や、指の関節の背面に扁平な赤みが生じる「ゴットロン丘疹」は、皮膚筋炎の特徴的な所見です。

「最近、階段が上がりにくい」「腕が上げにくい」といった筋力が弱ってきたような症状を伴う場合は特に注意が必要です。また、成人発症の皮膚筋炎では悪性腫瘍の合併が約20〜30%に認められることが知られており、がんの検索が推奨されます。

まぶた周囲のはれぼったい紅斑、ヘリオトロープ疹(Heliotrope sign)。ヘリオトロープの花の色に由来していますが、日本人の場合は、紫が買った色味には見えません。

強皮症

寒さや緊張で指先が白〜紫〜赤と変色する「レイノー現象」や、指・手の甲の皮膚が硬く厚くなる「手指硬化」は強皮症(全身性硬化症)のサインです。皮膚だけでなく、肺・食道・腎臓などにも病変が及ぶことがあり、早期発見・早期治療が重要です。

比較的早期の強皮症 手の甲や指は腫れぼったく、硬くて皮膚をつまみづらくなっています。

悪性腫瘍関連の皮膚症状(腫瘍随伴症候群)

体の内側のがんの影響で、皮膚に何らかの特徴的な症状が現れる一群を腫瘍随伴症候群 (Paraneoplastic syndrome)と呼びます。頻度は高くありませんが、見落とすと重大な見逃しにつながるため、皮膚科医として特に注意している所見です。

腫瘍随伴症候群(paraneoplastic syndrome)は、腫瘍そのものの局所浸潤や転移では説明できない全身症状を指し、腫瘍が産生する生理活性物質や免疫反応によって生じます。臨床的には腫瘍の早期発見の手がかりとなる重要な概念です。

黒色表皮腫

糖尿病・肥満と関連した黒色表皮腫とは異なり、急速に広がる・体幹にも及ぶ黒色表皮腫は胃がんをはじめとする消化器の腺癌との関連が非常に強いとされています。急速な変化を感じたら速やかに受診してください。

皮膚筋炎

前章でも触れましたが、特に50歳以上で新たに発症した皮膚筋炎では、肺・大腸・卵巣・乳腺などのがんの合併を積極的にスクリーニングします。

Bazex症候群

中年以降に多く、手のひらや足の裏が厚く角化し、赤みや鱗屑(皮膚の剥がれ)を伴う乾癬に似た皮疹が特徴です。腫瘍の発見前に症状が現れることがあるため、この症状が内臓悪性腫瘍の診断のきっかけとなることもあります。通常の塗り薬では治りにくく、腫瘍そのものの治療を行うことで改善することがあります。

Leser-Trélat徴候

脂漏性角化症(老人性イボ)という最もありふれた皮膚病変が急に(通常は6ヶ月以内)全身にたくさん増えてくる場合、これを疑います。このイボは極めてありふれたできものなので、脂漏性角化症があるだけでがんを疑うわけではありません。

Sweet病

別名は急性熱性好中球性皮膚症といいます。急な発熱と痛みを伴う浮腫状の丘疹や斑点結節が全身の皮膚にできるまれな炎症性疾患です。特発性のもの、血液または内臓の悪性腫瘍と関連するもの、あるいは薬剤誘発性のものもあります。Sweet病の15〜20%に悪性腫瘍が合併しますが、その多くが血液疾患であり固形腫瘍は稀です。

内臓からくる皮膚病変かどうか心配になったら

皮膚科を受診してください!皮膚の病変から内臓疾患を類推するのは皮膚科医が最も得意だからです。そこから必要な診療科に紹介することになります。

※ 本記事は医療情報の提供を目的としており、個々の症状・疾患に対する診断・治療を行うものではありません。気になる症状がある場合は医療機関を受診してください。

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