乾癬(かんせん)におかかりの方は関節が痛くなることがあります。最近はいろんなネットでの知識が得られてきたので肩が痛くなったり、腰が痛くなったりしても乾癬のせいではないか、と心配される方も多くなってきました。当院でもよくご相談をお受けしています。乾癬は皮膚の病気というよりも、皮膚を中心とした全身の病気で、時に関節にもダメージが来る、ということを知っておかねばなりません。ふくおか乾癬友の会の学習会などでも、よく関節炎についての質問をお受けしています。
乾癬性関節炎:乾癬で関節が痛くなるんです。
乾癬性関節炎は、国内では関節症性乾癬とも言われていたのですが、国際的な呼び名から乾癬性関節炎が最近は採用されるようになりました。ある程度進行した症状は、関節リウマチとよく似ています。ただ、リウマチとの違いは第一関節(遠位指節間関節:DIP joint)に関節炎が生じることです。
乾癬性関節炎は、乾癬全体の10%程度に発症すると言われていますが、現在の統計では割合が増えてきています。これは多くの医療関係者、患者さんたちが乾癬性関節炎を理解してきたことが要因だと考えられています。
難しい話になりますが、乾癬性関節炎は、脊椎関節炎(spondyloarthritis, SpA)という疾患群の一部でもあります。関節炎の側から見た乾癬、という考え方です。ですから、乾癬性関節炎は乾癬という疾患群の一部でもあり、脊椎関節炎の一部でもあります。SpAの中には、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患関連性関節炎、反応性関節炎、ぶどう膜炎関連性関節炎、分類不能脊椎関節炎があります。このような分類があるため、リウマチ医がみている乾癬性関節炎と皮膚科医が見ている乾癬性関節炎は多少異なっているかもしれません。
乾癬性関節炎の分類
乾癬性関節炎は、末梢優位な関節炎、非対称の少数関節炎、関節リウマチ様の多関節炎、体軸関節炎(脊椎炎)、急速進行性のムチランス関節炎の5つに分類されます(Moll & Wright分類)。手指に症状がなくても、腰が痛い、背骨が痛いだけの乾癬性関節炎もあるわけです。
どんな症状?
乾癬性関節炎は、関節炎という病名ではありますが、病変が始まるのは腱が骨にくっつく場所、すなわち付着部です。これを付着部炎といいます。アキレス腱の付け根が腫れて痛む、などの症状が特徴的です。足の裏の痛み(足底腱膜炎:そくていけんまくえん)もよく診られる症状です。また、特徴的な症状としては指全体がソーセージのように腫れる、指炎(dactylitis)が生じることです。これもリウマチには見られません。
乾癬性関節炎では、主に手指の腫れや痛み、朝のこわばりなどが見られます。DIP関節に症状がある方は爪に乾癬ができていることが多いです。乾癬が爪、お尻、頭にできているときは、関節炎がおこるリスクが高くなるということが知られています。また、体軸関節炎では腰痛やおしりの痛みがあります。この腰痛は休んでいると悪化し、動かすと楽になるのが特徴です。いずれの関節炎も進行すると骨の変形をきたす結果、指が曲がったままになったり、背骨が固く動かせなくなってきたりします。
乾癬性関節炎かもしれない、どうしたらいいの?
大切なのは、やはり早く見つけて治療することです。ただし、痛いところがあっても、それは必ずしも関節炎でないこともあります。五十肩とかヘルニアなどであることも多いです。ですから、大切なのは痛いところがあると主治医にちゃんと伝え、然るべき検査をしてもらうことが大切です。具体的にはレントゲンやエコー、MRI、血液検査などを行い、乾癬性関節炎の診断をしっかりつけることが大切です。もちろん、乾癬性関節炎でなかったとしても、痛いところはしっかり治療しましょう。
皮膚科医に対して痛い所を言っていいかどうかを、迷うこともあると思います。痛いところがあるときは、必ず言ったほうがいいです!!
乾癬性関節炎の治療法
乾癬性関節炎の治療には、塗り薬や光線療法は効きません。生物学的製剤、JAK阻害薬、アプレミラスト、メトトレキサートなどの薬物療法が中心となります。これらの治療を早く始めることで関節炎の寛解が得られやすくなることも分かってきました。特に、生物学的製剤を使用した場合、関節炎の寛解だけでなく、関節や骨が壊れるのを食い止めたりすることも可能になります。その結果、関節炎によって指が曲がってもとに戻らない状態になるのを防いでくれる可能性もあります。
生物学的製剤が使える施設は、福岡県では24の病院と1診療所(日野皮フ科医院)です。症状が強くなった場合はこれらの施設に紹介を依頼する必要があるでしょう。
関節炎のセルフチェックリスト PEST psoriasis epidemiology screening test
関節が痛かったり腫れたりしたことはありますか?
医者に「関節炎がある」と言われたことはありますか?
爪に穴やへこみがありますか?
踵が痛むことがありますか?
手足の指が誘因なく腫れたり痛んだりしたことがありますか?
この5つのうち、3つ以上「はい」があれば、関節炎を疑ってしっかり調べましょう。年1回はセルフチェックすることで早く見つけることが何より大切です。