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市販のかゆみどめにはどんなものがある?
市販の「かゆみどめ外用薬」は、かゆみの原因そのものを抑える成分と、かゆみの感じ方をやわらげる成分と、荒れた皮膚を保護・修復する成分を組み合わせていることが多いです。
整理すると、次の3つの役割があります。まず、①湿疹や虫刺されなどの炎症を抑える。次に、②知覚神経への刺激を減らしたり冷感を与えたりしてかゆみの知覚を鈍らせる。最後に、③びらん・浸軟・乾燥などで悪化した皮膚を保護してかきむしりの悪循環を断つことです。慢性そう痒の総説でも、局所療法はこの考え方で位置づけられています。いろんな成分が入っているけど、どんな働きがあるかわからない人も多いです。本ページでは実際に発売されているかゆみ止めについて、含まれている成分を効き目ごとに分けて一覧表にしました。市販薬を薬局に買いに行く前に選ぶ参考にしていただけると幸いです。
市販かゆみ止め外用薬データベース(皮膚科医監修)
ドラッグストアで購入できる主なかゆみ止め外用薬29製品を、有効成分・ステロイド強度・剤形ごとに整理しました。
市販薬のステロイドはOTC専用のⅢ〜Ⅴ群の3段階に限られており、処方薬の強度分類とは異なります。症状・部位・年齢に合わせてお選びください。
| 商品名 | メーカー | 剤形 | ステロイド成分 | 抗ヒスタミン | 局所麻酔 | 止痒剤 | 保湿 | 抗菌薬 | 清涼剤 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ▸ ステロイドなし ── 顔・子供・敏感肌にも使いやすい | |||||||||
| ムヒベビー ステロイドなし | 池田模範堂 | 液 | ― | ジフェンヒドラミン 0.5% | ― | ― | ― | ― | メントール(少) |
| 新レスタミンコーワ軟膏 ステロイドなし | 興和 | 軟膏 | ― | ジフェンヒドラミン 2% | ― | ― | ― | ― | ― |
| レスタミンコーワUクリーム ステロイドなし | 興和 | クリーム | ― | ジフェンヒドラミン 2% | ― | ― | 尿素10% | ― | ― |
| メンソレータムADクリームm ステロイドなし | ロート製薬 | クリーム | ― | ジフェンヒドラミン 1% | リドカイン2% | クロタミトン5% | ― | ― | ― |
| メンソレータムAD20 ステロイドなし | ロート製薬 | 乳液・クリーム | ― | ジフェンヒドラミン 1% | ― | クロタミトン5% | 尿素20% | ― | ― |
| ▸ ステロイドⅤ群(弱)── OTC最弱クラス。顔・首・陰部への長期使用は避ける | |||||||||
| コートf MD軟膏 Ⅴ群(弱) | 田辺ファーマ | 軟膏 | プレドニゾロン0.5% | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
| ムヒS2α Ⅴ群(弱) | 池田模範堂 | 液・クリーム | ヒドロコルチゾン0.5% | ジフェンヒドラミン 1% | リドカイン2% | ― | ― | ― | メントール・カンフル |
| 液体ムヒS2a Ⅴ群(弱) | 池田模範堂 | 液 | デキサメタゾン酢酸エステル | ジフェンヒドラミン 2% | ― | ― | ― | ― | メントール・カンフル |
| ムヒアルファSII Ⅴ群(弱) | 池田模範堂 | クリーム | デキサメタゾン酢酸エステル | ジフェンヒドラミン 2% | ― | ― | ― | ― | メントール・カンフル |
| ムヒアルファEX Ⅴ群(弱) | 池田模範堂 | 液 | ヒドロコルチゾン0.5% | ジフェンヒドラミン 2% | リドカイン2% | ― | ― | ― | メントール |
| メンソレータムメディクイック Ⅴ群(弱) | ロート製薬 | クリーム・液 | ヒドロコルチゾン0.5% | ジフェンヒドラミン 1% | リドカイン2% | ― | ― | ― | メントール |
| メンソレータムメディクイックHゴールド Ⅴ群(弱) | ロート製薬 | ローション | ヒドロコルチゾン0.5% | ジフェンヒドラミン 1% | リドカイン2% | ― | ― | ― | メントール |
| デリケアエムズ Ⅴ群(弱) | 小林製薬 | クリーム | ヒドロコルチゾン酢酸エステル0.5% | ジフェンヒドラミン 1% | リドカイン1% | ― | ― | ― | ― |
| 液体ムヒパッチA Ⅴ群(弱) | 池田模範堂 | パッチ | ヒドロコルチゾン0.5% | ジフェンヒドラミン 1% | リドカイン2% | ― | ― | ― | メントール |
| 新ウナコーワクールα Ⅴ群(弱) | 興和 | 液 | ヒドロコルチゾン酢酸エステル0.5% | ジフェンヒドラミン 1% | リドカイン1% | ― | ― | ― | メントール |
| テラ・コートリル軟膏 Ⅴ群(弱) | Kenvue | 軟膏 | ヒドロコルチゾン酢酸エステル1% | ― | ― | ― | ― | オキシテトラサイクリン3% | ― |
| ▸ ステロイドⅣ群(中)── 炎症・赤みの強い湿疹に。2週間以内の使用が原則 | |||||||||
| プレバリンα Ⅳ群(中) | 久光製薬 | クリーム・軟膏 | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル 0.15% | ジフェンヒドラミン(一部規格) | ― | ― | ― | ― | ― |
| 新リビメックスコーワ Ⅳ群(中) | 興和 | クリーム | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル 0.15% | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
| メディロイドVS軟膏 Ⅳ群(中) | 大正製薬 | 軟膏 | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル 0.15% | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
| ロコイドクリーム・軟膏(OTC) Ⅳ群(中) | 各社 | クリーム・軟膏 | ヒドロコルチゾン酪酸エステル0.1% | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
| かゆみ止めEXパッチ Ⅳ群(中) | 久光製薬 | パッチ | 酢酸トリアムシノロン0.1% | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
| ウナコーワエースG/L Ⅳ群(中) | 興和 | ゲル・液 | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル 0.15% | ジフェンヒドラミン 2% | リドカイン1% | ― | ― | ― | メントール・カンフル |
| ウナコーワエースプレミアムG/L Ⅳ群(中) | 興和 | ゲル・液 | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル 0.15% | ジフェンヒドラミン 2% | ― | ― | ― | ― | ― |
| コートfATクリーム/軟膏 Ⅳ群(中) | 田辺ファーマ | クリーム・軟膏 | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル 0.15% | ジフェンヒドラミン 1% | リドカイン2% | ― | ― | フラジオマイシン0.35% | ― |
| ▸ ステロイドⅢ群(強)── OTC最強クラス。1〜2週間以内、顔・首・陰部への使用は禁忌 | |||||||||
| リンデロンVs Ⅲ群(強) | シオノギヘルスケア | 軟膏・クリーム・ローション | ベタメタゾン吉草酸エステル0.12% | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
| ベトネベートクリームs Ⅲ群(強) | 久光製薬 | クリーム | ベタメタゾン吉草酸エステル0.12% | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
| ベトネベートN軟膏AS Ⅲ群(強) | 久光製薬 | 軟膏 | ベタメタゾン吉草酸エステル0.12% | ― | ― | ― | ― | フラジオマイシン0.35% | ― |
| フルコートf Ⅲ群(強) | 田辺ファーマ | 軟膏 | フルオシノロンアセトニド0.025% | ジフェンヒドラミン 0.5% | ― | ― | ― | フラジオマイシン0.35% | ― |
| ▸ 参考掲載 ── 添付文書上「かゆみ」効能の記載なし | |||||||||
| キンカン ★かゆみ適応外 | 金冠堂 | 液 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | メントール |
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皮膚科医からの注意点
・顔・首・陰部・粘膜周囲へのステロイド含有薬の長期使用は避けてください(皮膚萎縮・毛細血管拡張のリスク)
・外用薬の成分によっては、塗布部位に接触皮膚炎(かぶれ)を引き起こすことがあります。使用後に症状が悪化した場合は使用を中止してください
・2週間使用しても改善しない場合は原因疾患の特定が必要です。皮膚科へご相談ください
・アトピー性皮膚炎・乾癬・慢性湿疹など炎症性疾患には市販薬では根本的な治療になりません
・本表は調査時点(2025年)の情報をもとに作成。成分・品名は変更される場合があります
市販のかゆみ止め塗り薬は3つの役割の成分を含んでいる
1. 炎症を抑えてかゆみの原因に働きかける成分
ステロイド
最も重要なのは、炎症性のかゆみにはまず抗炎症という点です。湿疹、接触皮膚炎、虫刺され反応などでは、皮膚の炎症がかゆみの駆動因子なので、局所ステロイドは炎症を鎮めることでかゆみも改善します。慢性そう痒のレビューでも、炎症性のかゆみに対する第一選択のひとつとして位置づけられています。逆に、感染症や疥癬、神経障害性そう痒など、炎症以外が主因のかゆみでは効き方に限界があります(1)。
抗ヒスタミン薬(外用)
外用抗ヒスタミン薬は、「ヒスタミンが主役のかゆみ」には理屈上合います。たとえば蕁麻疹様反応や虫刺されの一部では、ヒスタミンが大きく関与しています。
ただし、エビデンスに関しては、ジフェンヒドラミンなど多くの外用抗ヒスタミン薬は根拠が弱い、つまり有効性を十分に証明できていないとされています。つまり、市販薬に入っていても「何にでもよく効く主役成分」とまでは言いにくく、補助的な位置づけで見るのが妥当です(2)。
グリチルレチン酸
グリチルレチン酸は甘草由来成分で、抗炎症・抗刺激を狙って配合されます。市販薬での役割としては「赤み・刺激・軽い炎症を和らげる補助成分」と考えるとわかりやすいです。かゆみを直接止める主成分というより、炎症を軽くして結果的にかゆみを減らす役割です。基礎研究や一部臨床報告では、炎症性サイトカイン抑制や掻破抑制作用が示されていますが(3)、ステロイドのような確立した主役ではありません。
2. かゆみの感覚をやわらげる成分
クロタミトン
クロタミトンは古くから止痒作用を目的に用いられてきた成分で、疥癬治療薬として知られていますが、非疥癬性のかゆみに対する抗そう痒作用も研究されています(5)。動物実験では、ヒスタミン、セロトニン、PAR-2刺激による掻破行動を中等度に抑制しました。
一方で、古い臨床試験では基剤との差が明瞭でない報告もあり、万能ではありません。したがって臨床的には、軽いかゆみに対する補助成分、あるいは複合製剤の一部としての意味合いが強いです。
リドカイン
リドカインは局所麻酔薬で、知覚神経のナトリウムチャネルを遮断し、かゆみや痛みの伝達を減らすのが主な役割です(6)。つまり、炎症そのものを治すというより、今つらいかゆみを鎮める即効性寄りの成分です。神経障害性の要素を含むかゆみや、掻破でヒリヒリ感を伴う部位では理にかないます。近年も、アトピー性皮膚炎モデルや一部の臨床報告で、そう痒軽減への可能性が示されています。
メントール
メントールは、皮膚の冷感受容体であるTRPM8を刺激して「スーッとする冷感」を生じさせ、かゆみの知覚を相対的に和らげます。これは典型的なcounter-irritantの考え方で、炎症を治すというより、感覚入力を変えてかゆみを紛らわせる成分です。慢性そう痒の総説でも、メントールは補助的な局所止痒成分として紹介されています(7)。しみる部位やバリア障害が強い部位では刺激になることがあります。
カンフル
カンフルもメントールと同様、清涼感や軽い刺激感によってかゆみの知覚を変える補助成分です。メントールと併用されることが多く、古典的な「かゆみ止めらしい使用感」を作る成分でもあります。教科書的には、メントール・カンフル含有ローションは一時的な症状緩和に用いられるとされますが、炎症を根本治療する成分ではありません(8)。
3. 荒れた皮膚を保護・修復する成分
アラントイン
アラントインは、皮膚の保護、角質調整、創傷治癒補助、軽い抗炎症を期待して配合されることが多い成分です。つまり、掻いて荒れた皮膚を落ち着かせる方向の成分で、直接的な強い止痒薬ではありません。市販薬では、ひび・あれ・軽い炎症を伴う部位に配合する理屈があります。文献上は、抗炎症や組織修復を示す報告はあるものの、単独での止痒エビデンスは強くありません。
酸化亜鉛
酸化亜鉛は、いわゆる皮膚保護剤です。バリアを作って、湿潤、摩擦、便や汗、浸出液などの刺激から皮膚を守ります。直接的な止痒薬というより、ただれ・かぶれ・おむつ皮膚炎・掻きこわし後の皮膚保護に意味があります。炎症軽減や創傷治癒補助も期待され、刺激が減ることで結果としてかゆみも軽くなります。
かゆみは非常に複雑なメカニズムで起こります。そして治すのは難しいです。市販薬を使ってもうまくいかない時は、なるべく早く病院を受診しましょう。
こんな症状は皮膚科へ:受診チェックリスト
以下の項目に当てはまるものにチェックしてください。1つでも該当する場合は早めに皮膚科をご受診ください。
- ✓ 2週間以上かゆみが続いている
- ✓ 夜眠れないほどかゆい
- ✓ 市販薬を使っても改善しない
- ✓ 皮膚に発疹・赤み・ただれを伴っている
- ✓ 皮膚に症状はないのに全身がかゆい
- ✓ 乳幼児や子供のかゆみが続いている
- ✓ 皮膚が厚くなったり、黒ずんだりしている
- ✓ かゆみが特定の場所に繰り返し起きる
チェック数:0 / 8項目
項目をチェックしてください気になる項目があればチェックしてください。
※このチェックリストは受診の目安を示すものであり、診断ではありません。
※気になる症状がある場合はお気軽にご相談ください。
参考文献
- Butler DC, et al. Chronic Pruritus: A Review. JAMA. 2024.
- Eschler DC, Klein PA. An evidence-based review of the efficacy of topical antihistamines in the relief of pruritus. J Drugs Dermatol. 2010.
- Akasaka Y, et al. Glycyrrhetinic acid prevents cutaneous scratching behavior... 2011.
- Sekine R, et al. Anti-pruritic effects of topical crotamiton... Exp Dermatol. 2012.
- Anand P. Capsaicin and menthol in the treatment of itch and pain: recently cloned receptors provide the key. Gut. 2003.
- Sun PY. et al. Lidocaine alleviates inflammation and pruritus in atopic dermatitis by blocking different population of sensory neurons. Br J Pharmacol. 2023.
- Tessa B et al: Prurigo Nodularis. StatPearls [Internet].
- Saucedo-Acuña RA, et al. Characterization and In Vivo Assay of Allantoin-Enriched Extracts... 2023.
- Gupta M, Mahajan VK, et al. Zinc Therapy in Dermatology: A Review. 2014.