デュピクセント(デュピルマブ)

デュピクセントとは、2018年から使用できるようになったアトピー性皮膚炎の治療薬です。言っママでなかなか治療がうまくいかなかったアトピー性皮膚炎の患者さんにとって、待ちに待ったお薬です。2週間に1回注射をします。一般名はデュピルマブdupilumab、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体といいます。生物学的製剤というジャンルに属するお薬で、生体が作る抗体というタンパクを人工的に作ってアトピーを悪化させる活性物質にピンポイントで作用させるのを目的としています。

院長が軽度のアトピーを持っているため、日野皮フ科医院はアトピー性皮膚炎の治療に力を入れております。また、当院は元々乾癬の治療で生物学的製剤使用認定施設を取得していますので、生物学的製剤の使用経験が豊富です。そのため、当院には近隣の皮膚科から治りにくい患者さんがデュピクセントの注射を目的として紹介されます。

現在、当院ではデュピクセントを多くの方に投与しており、成果を上げております。今までの治療を十分に行ってきたにも関わらず6ヶ月以上皮膚症状がうまく改善しない方を対象としています。添付文書にも以下のように書かれています。2023年9月25日から生後6ヶ月以上のお子さんにも適応が拡大しました。

デュピクセントの対象となる患者さん

ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等の抗炎症外用剤による適切な治療を一定期間施行しても、十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に用いること。

デュピクセント添付文書より引用

デュピクセントは、塗り薬などでちゃんと治療していたにも関わらず満足な効果が得られない患者さんに使用すべき薬剤です。今まで何も治療していなかった方は、まず塗り薬や光線療法などの治療を行います。塗り薬の正しい塗り方をマスターすると、デュピクセントを使わずに済んだ患者さんも多く経験しています。

アトピー性皮膚炎以外にデュピクセントが適応となる皮膚疾患

結節性痒疹 

300mgシリンジ、300mgペンのみが適応となります。15歳以上の既存治療で効果不十分な患者さんに使用できます。

慢性じんま疹

300mgシリンジ、300mgペン及び200mgシリンジが適応となります。12歳以上の既存治療で効果不十分な患者さんに使用できます。

デュピクセントはどんな注射?

注射器型のシリンジと、自己注射に向いているペンの2つがあります。


シリンジ型製剤は自分で注射する圧を調整しながら注射できることがメリットです。薬価は1本 66356円です。


ペン型製剤は押し付けるだけで薬液が注射できますので、安全でかんたんなことがメリットです。薬価は 66562円 です。

デュピクセントはどんな薬?

インターロイキン4(IL-4)、IL-13という、アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみに大きく関わる蛋白の働きを抑えます。正確には、デュピルマブは IL-4受容体α (IL-4Rα)をブロックする薬です。この受容体にIL-4, IL-13がくっつくことでいろんな炎症を起こすのですが、デュピルマブがIL-4Rαを邪魔することでIL-4, IL-13が働かないようになります。その結果、アトピー性皮膚炎のかゆみ、皮膚炎症状が改善します。また、IL-4, 13はフィラグリンという皮膚のバリア機能を保つための重要な蛋白を作りにくくさせることが知られておりますので、これを抑えることで皮膚のバリア機能の回復も期待できます。

噛み砕くと、デュピクセントを使うことで「アトピー性皮膚炎のかゆみや皮膚炎だけでなく、原因となるバリア機能も改善させてくれる」ことが分かっています。

サノフィ社サイトより引用 デュピクセントが皮膚炎、かゆみ、皮膚のバリア機能改善に対して作用することを簡単に説明しています。

15歳以上の患者さんに対するデュピクセントの投与スケジュール

初回投与は600mg(2本)です。以後、2週間おきに1本(300mg)ずつ注射します。

初診時は問診、診察にて適応があるかどうかの確認を行います。また、おかかりのクリニックや病院の先生とご相談して当院で治療する場合は、紹介状をいただけるとより助かります。なお、初診時にデュピクセントの投与はできません。

投与開始準備のため、導入日を予約させていただきます。
導入日に現状の把握のため諸検査を行います。導入初回から自己注射を意識して練習を開始します。1本目は医師または看護師が注射しますが、2本目からはご自身で注射していただきます。
2週間後にもデュピクセントを1本注射をします。これも、医師または看護師が横について指導します。慣れないことですので、安全に注射ができるようになるまで来院日ごとに指導いたします。

当院で現在までにデュピクセントを導入した患者さんは、皆さんほとんど自己注射をマスターされています。

小児への投与方法

お子さんは体重ごとに投与方法、容量、スケジュールが異なります。

5kg以上15kg未満  初回200mg,以後4週間おきに200mg
15kg以上30kg未満 初回300mg, 以後4週間おきに300mg
30kg以上60kg未満 初回400mg, 以後2週間おきに200mg
60kg以上      初回600 mg, 以後2週間おきに300mg(成人と同じ使い方)

200mgはシリンジタイプ(注射器)となります。2023年9月現在まだ発売されていないため、現在使えるのは体重15−30kgもしくは60kg以上のお子さんのみになります。

自己注射がおすすめの理由

自己注射なんて怖いことしたくない、と思うのは当然だと思います。それでも自己注射が大切である2つの理由はこちらです。

  • 薬剤費が抑えられる(高額療養費制度を活用する)
  • 通院間隔が抑えられる

通院間隔をあけることができるのは、忙しい患者さんにとっては大変役立ちます。現在、当院でデュピクセントを始めとする生物学的製剤を使用されている方の中には、福岡県外にお住まいの方もおられ、治療のためにわざわざ福津市までおいでになります。その通院にかかる手間やコストを減らすことは大変重要なポイントです。

薬価

デュピクセントは2022年8月から薬価改定で価格が下がります。1本あたりの薬価を参考までに示します。

デュピクセント300mgシリンジ  66,356→58,593 3割負担で1本17,580円
デュピクセント300mgペン    66,562→58,775 3割負担で1本17,630円

高額療養費制度

薬剤費が高額なため、高額療養費制度を利用されることを強くおすすめします。収入や年齢により適応となる場合やそうでない場合があります。

高額療養費制度のシミュレーションはここから

自己注射をする場合、最大6本の注射薬を処方することができ、一部の方には高額療養費制度を用いて医療費の負担軽減が可能です。

デュピクセントに関するよくある質問

Q. 何回打てばいいの?
A. 回数の決まりはありません。長期に継続することでより高い効果を期待できます。

Q. 塗り薬は塗らないの?
A. 通常は今までの塗り薬をしっかり継続しつつ注射を行うことで、より高い治療効果が得られます。添付文書でも「原則として、本剤投与時にはアトピー性皮膚炎の病変部位の状態に応じて抗炎症外用剤を併用すること。」と記されています。

Q. 注射は止めてもいいの?
A. 中断は可能で、中断した後の再開も可能です。

Q. どのくらい打てば効きますか?
A. 1回の注射でも効果は実感できると思います。3ヶ月くらい継続するとかなりの割合で効果を得られます。

Q. 初診日に注射は可能?
A. 在庫をおいていないので、初診日には注射できません。注射開始日を予約して導入します。

この記事を書いた人

福岡県では、まだデュピクセントを扱っている医療機関が少ないです。治療がうまくいかないアトピー性皮膚炎の患者さんは、一度ご相談下さい。

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