アトピー性皮膚炎の注射薬に新しい仲間が加わります。ミチーガというmade in Japanのお薬です。一般名はネモリズマブ(nemolizumab)といい、ヒト化抗ヒトIL-31受容体A(IL-31RA)モノクローナル抗体です。IL31はかゆみに重要な役割を果たすサイトカインで、主にTh2細胞から作られます。つまり、ミチーガはアトピー性皮膚炎に伴うそう痒(かゆみ)を改善させる新しい発想のお薬です。30mgシリンジが発売されたことで、2024年6月から6歳以上の小児アトピー性皮膚炎、および13歳以上の結節性痒疹に適応が拡大しました。

マルホ社のサイトから引用
IL-31とアトピー性皮膚炎、そしてかゆみ
IL-31は、Th2細胞から産生され、アトピー性皮膚炎の皮膚病変部では、過剰に産生されていることが知られています1)。また、血清中のIL-31の濃度はアトピー性皮膚炎患者さんでは上昇しており、病気の勢いと相関していることが知られています2)。IL-31は神経線維が成長することを促進し、痒みを増強する働きもあります3)。IL-31の受容体は神経線維や表皮角化細胞に分布しています。また、IL-31はバリア低下にも働くことが知られています4)。もちろんIL-31の主要な働きは痒みですので、バリア低下に深く関わるサイトカインはIL-4/13であることは強調しておきたいと思います。そして、この受容体は、感覚情報の中継点として機能する脊髄後根神経節に多く発現しており、痒みを脳に伝えることにも深く関わっています5)。つまり、IL-31はかゆみに関係する神経を刺激して脳にそのかゆみを伝え、そして神経の成長を助けて痒みを起こしやすくする働きがあります。この受容体は、IL-31RAとオンコスタチンM受容体(OSMR)が合わさってできており(図参照)、ミチーガはそのうちIL-31RAに結合して働きを抑えます。
IL-31は、
1.かゆみに関係する神経を刺激→脳にそのかゆみを伝える
2.神経の成長を助けてかゆみを起こしやすくする
アトピー性皮膚炎をおこす中心的な細胞であるTh2細胞とかゆみに伴う神経系をつなぐ働きをするサイトカインです。
結節性痒疹とIL-31
結節性痒疹は、強いかゆみを伴う硬いしこり(結節)が皮膚に多発する慢性の皮膚疾患です。腕や脚など“手が届きやすい部位”に左右対称に出現することが多く、かゆみ→掻破→さらに悪化、という悪循環に陥りやすいのが特徴です。
結節性痒疹(Prurigo Nodularis, PN)では以下の変化が確認されています。
🔹 皮疹部でIL-31発現が上昇
🔹 IL-31受容体の発現増加
🔹 神経線維の増生(神経過敏状態)
つまり、
IL-31 → 神経刺激 → 強いかゆみ → 掻破 → 炎症悪化 → さらにIL-31増加
という“かゆみの悪循環”が形成されます。
ミチーガはどんな薬?
ミチーガ60mgシリンジは、デュアルチャンバーシリンジ(二室式のプレフィルドシリンジ)に凍結乾燥品及び溶解用の注射用水を充填した注射剤になっています。30mgバイアルは、院内で溶解して注射するタイプの製剤となっています。


用法・用量
13歳以上のアトピー性皮膚炎の方:60 mgを4週に1回皮下注射で投与することになっています。
6歳以上13歳未満のアトピー性皮膚炎の方:4週ごとに1回30mgの皮下注射
結節性痒疹の方:初回は60mg、その後4週に1回30mgの皮下注射
60 mg 製剤は在宅自己注射が可能です。30 mg製剤を使用する方は自己注射ができません。


適応
6歳以上のアトピー性皮膚炎、および13歳以上の結節性痒疹(既存治療で効果不十分な場合に限る)となっています。
ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等の抗炎症外用剤及び抗ヒスタミン剤等の抗アレルギー剤による適切な治療を一定期間施行しても、そう痒を十分にコントロールできない患者さんが対象となります。
ミチーガの効果
第三相臨床試験の結果6)より、かゆみに関しては、1週目より有意な差がみられています。速やかなかゆみの改善、という点は期待したいところです。皮膚炎も有意な改善効果が得られていますが、メカニズム的に既存薬に比べて強い効果、と言い難いところがあります。ただ、この臨床試験は皮膚炎の治療薬を治験前に一時中断(ウォッシュアウトといいます)していないことを考えると良い結果なのではないか、と個人的に考えています。


副作用
添付文書によると、アトピー性皮膚炎(18.5%)、皮膚感染症(ヘルペス感染、蜂巣炎、膿痂疹、二次感染等)(18.8%)が頻度の多い副作用です。ウイルス、細菌、真菌等による重篤な感染症が3.4%に認められ、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、蕁麻疹等)などの重篤な過敏症が0.3%報告されています。
使用上の注意
ミチーガはかゆみを治療する薬剤であり、かゆみが改善した場合も含め、投与中は塗り薬をはじめとした必要な治療を継続することが必要です。ネモリズマブはIgGという種類の抗体製剤ですので、胎盤や乳汁に移行することが可能です。そのため、妊娠中や授乳中の投与は禁忌ではありませんが、治療上の有益性が投与の危険性を上回ると判断された場合にのみ使用することになっています。また、アトピー性皮膚炎の病勢を示すマーカーであるTARCが、治療経過とともに上昇することがあるようです。そのため、ミチーガの効果判定にTARCを使用できないことも注意点です。
ミチーガの気になる薬価
ミチーガ皮下注用60mgシリンジ:117,181円
3割負担で35,150円です(薬剤費)。
アトピー性皮膚炎で最もつらい症状はかゆみです。そのかゆみで不快な思いをしたり、眠れなくなったり、ストレスを感じたり、、など多くの患者さんはとても言い表せないような辛さを感じてきました。そのかゆみを改善できるお薬は多くの患者さんにとって穏やかな日々を過ごすためにとても役立つものと思います。
よくある質問
いつごろ発売ですか?
2022年8月8日に発売され、当院でも使用しています。
全く病院にかかっていない状態で、かゆいんですけど、すぐミチーガを打てますか?
アトピー性皮膚炎に対する塗り薬、などの標準治療を行い、その結果かゆみが改善しない場合に使用します。
小さい子供には使えますか?
6歳から使用できます。結節性痒疹は13歳からです。
高額療養費制度は使えますか?
60mgシリンジをお使いの方は、自己注射を活用することで、区分によっては高額療養費制度の利用が可能です。
参考文献
1)Guttman-Yassky E, et al: J. Allergy Clin. Immunol. 143 : 155-172, 2019
2)Ezzat MHet al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 25:334–9, 2011.
3)Feld M, et al.:J Allergy Clin Immunol. 2016;138:500-508.
4)Cornelissen C,et al : J. Allergy Clin. Immunol.129 : 426-433, 2012.
5)Furue M, et.al : Allergy. 73 : 29-36, 2018.
6)Kabashima K et al: N Engl J Med. 383:141-150,2020.