ステロイド外用薬の副作用について解説します。
ステロイド外用剤 を正しく使うためには、副作用を知ることは欠かせません。また、知らずにいい加減に使うのが一番よくありません。そして、必要以上に怖がってもいけません。そのため、正確な情報は大切です。
怖がることは決して間違っていません。知らずにイメージだけで怖がらないようにしたいですね。
ステロイド外用剤の副作用 はありますが、大半は可逆性、すなわち元の皮膚に戻ることが可能です。しかし、その中でも、皮膚萎縮線条は元に戻すのがきわめて困難です。だからこそ、しっかりと相談し合いながら治療しなければなりません。
どんな副作用が心配?
ステロイド 外用剤のアンケートをとったところ、全身性の副作用が出ることが心配、という意見を最もいただきました。これは、全身に強いステロイドを何本も、かつ長期間塗ったときには起こりうるのですが、大半のアトピー性皮膚炎の方に塗っているやり方では起こりえません。通常は全身に吸収されるステロイドの量は塗った薬の3%程度と言われています。
また、ステロイドで皮膚が黒くなるというのは、「都市伝説」です。おおむね、これは炎症後色素沈着といいます。皮膚炎がしっかり落ち着いていれば、時間はかかりますが改善します。黒くならないようにするためには、早期からしっかりと治療することが大切です。
ステロイドには依存性があるのでは、と心配されている方も多かったです。
依存症の症状は、精神症状(いわゆる“精神依存”)と身体的離脱症状(いわゆる“身体依存”)に分類される。精神依存はあらゆる物質(カフェイン、糖分など食品中に含むものも含め)や行為にみられるが、身体依存は必ずしも全ての依存に見られるわけではない。例えば、薬物以外による依存では身体依存は形成されないし、また薬物依存の場合も身体依存を伴わない物質がある(Wikipediaより)。
これを外用ステロイドに当てはめると、塗り薬を塗らないと離脱症状が出る、ということになります。皮膚の状態が十分に治っていない時に中断すると、皮膚炎は再燃します。これをリバウンドと行っている方が多いです。”steroid addiction” がタイトルにあるシステマティックレビューがありました。それによると、ステロイド依存を現す明確な徴候は見当たらないこと、結局はステロイドをちゃんと使えていないことにより生じている状態であると結論付けられています(Hajar T et al: J Am Acad Dermatol 2015)。
じゃあ、ステロイド依存はないということが分かりましたが、治療がうまくいかないときはどうしたらいいでしょう。
塗っていてもうまく改善しないときこそ、主治医と共にどうしたらよいかをよく相談することが大切です。効かないときはステロイド外用剤の塗り方を変えてみる、悪化因子を見直す、光線療法を追加してみる、保湿を強化する、着ている服の素材を見直す、飲み薬を追加する、注射をする、などいろいろな方法があります。ステロイド以外の塗り薬(プロトピックやコレクチムなど)を使ってみてもいいかもしれません。アトピー性皮膚炎の有効な治療法は、ステロイド外用薬を使うことだけではありません。
患者さんが一番やってはいけないことは、「どうせ変わらないから、この薬だけ出して」と特に相談もせずに塗り薬をだけ要求することです。これをやっている限りうまくいくことはないでしょう。
ポイント
ステロイド外用剤の副作用をしっかり知りましょう。
全身への副作用は、よっぽど長期大量に塗らない限り起こりません。
ステロイド外用剤の副作用は、時間がかかりますが、大半はもとに戻ります。
ステロイド外用剤で、色は黒くなりません。
ステロイド依存は、ありません。
ステロイド外用剤だけでうまくいかないとき、それ以外の方法も含め、主治医とよく相談しましょう。
「この薬だけ出して」を続けない。