ここにアレルギーができています。原因はなんですか?

乾燥していることとか、洗う時にこすりすぎるとか・・

だから何の食べ物が悪いんですか???

食べ物は大丈夫ですよ。今までもなんともなかったでしょ?

アレルギーの検査をしたいです。心配だから。

・・・・(説明に迷う)

・・(この症状はそもそもアレルギーと全く無関係ですから検査は無意味です!)← 怒るよね。。
・・(はーい、すぐ検査します!まいどあり!)←悪徳感あるよね。。

・・・・(説明に迷う)

 当院は、皮膚炎のあるちびっ子がたくさん受診されます。

 アトピー性皮膚炎のお子さんもおられますし、乾燥肌で荒れているために発症しているお子さんが最も多いです。

 このような皮膚炎をはじめて経験した親御さんは「アレルギーじゃないか?」と心配します。アレルギーである、と思っているからこそ、受診された際に「このアレルギーの原因は何ですか?」とお訊きになります。

 アトピー性皮膚炎の病態が解明され始め、遺伝的、環境的な多くの要因により皮膚が乾燥することが重要な役割を果たすことが明らかになってきました。だからこそ、当院では、皮膚炎の治療はもちろんのこと、しっかりとした保湿を継続的に行うことを重要視しています。

 すこし専門的な難しい話をします。

 アトピー性皮膚炎で、食物アレルギーが皮膚炎に「直接」関与することは通常あまりありません。一般的にあるアレルギー検査で測定するアレルゲンは特異的IgE抗体というものが用いられます。そもそも、アレルギーにおけるIgEの主な役割は、アレルゲンが体内に侵入したとき、肥満細胞からヒスタミンを中心とする物質を放出させるものです。そして、このような反応が起こった場合、皮膚では「じんましん」ができます。アトピー性皮膚炎の病変は湿疹反応であり、遅延型過敏反応といわれる「かぶれ」と同じ状態になります。

 もし、IgE抗体が関与する食物アレルギーが本当にあった場合、該当する食べ物を摂取し、15-30分くらいで蕁麻疹がでることになります。皮膚炎そのものの発症にIgEはほぼ関与しません。また、アレルギーの側から考えても、特異的IgEが陽性になった食物を摂取しても、全く症状がでないこともあります。そのため、食物アレルギーを正確に診断するためには「これまで食べてどうだったか?」という話が大切で、その情報を元に検査を考えたり、専門の入院可能な施設に紹介します。

 これらの理由から、このような症状のお子さんに、当院ではあまりアレルギーの血液検査を積極的には行いません。アレルギーの検査をしてくれないと、親御さんは時々不満そうな顔をされます。初診で来られた方の場合、断られたことへの不満をおっしゃる方も居ます。

 もし、食物アレルギーが本当に疑われる場合は逆にこちらから積極的に検査をすすめることもあります。

何軒か皮膚科とか小児科とかに行きましたけど、どこもアレルギーの検査をしてくれませんでした(怒)。検査をしてくれる病院を探してます。

 たしかに不安ですよね。なぜこうなってしまったのだろう、という気持ちはよくわかります。でも、検査はしなくていいんです!その検査をしても原因はわかりませんから。検査をすることで満足感は得られますが、結局原因には結びついていませんので、結果が出た時には再度不安になってしまうのです。

 一番大切なことは、検査をすることではなく、いま困っている痒みやブツブツを早く改善することであるはずです。「あそこの病院はすぐに検査をしてくれるいい病院」という話をよく聞きますが、高騰する医療費を少しでも抑制するためにも、そして、血液検査で子供に痛い思いをさせないためにも、当院では、「検査して欲しい」親御さんに対し、必要性がなければ検査をお断りしています。それよりも、なるべく皮膚炎を早く治してあげることが大切です。ブツブツが治ってしまったらアレルギーの心配をする必要すらなくなってしまいますよね。そのための協力は当然のことながら全力で行います。「この子に適したスキンケアの方法を教えて下さい」なんて言われたらものすごく長時間お話ししてしまうでしょう。当院は「すぐに検査をしてくれるいい病院」ではなく、最低限の検査で「すぐ皮膚の症状を治してくれるいい病院」でありたいです。