以前乾癬患者会の会報誌に掲載した内容ですが、少し改変してアップいたします。

乾癬(かんせん)で悩んでいる方は多いと思いますが、乾癬のことだけではなくお肌にはいろんな悩みが出てくるものと思います。また、乾癬があると、いろんなサロンや美容外科などに相談に行っても断られてしまうことも多く、傷ついてしまう方も少なくありません。そんな相談を毎日のように受けています。これらを解決するための方法をお教えします。問題を整理するため、乾癬特有の問題、そして乾癬の治療に伴って出てくる問題、そして年齢に伴って出てくる問題に分けて考えると良いです。

乾癬特有の問題には、まず治療で解決!

皮疹の赤み、ブツブツ、鱗屑(ふけ)

治療にまさる手段はありません。主治医としっかり相談して自分にあった治療を行っていきましょう。当院では、塗り薬の治療はもちろんのこと、光線療法、内服薬、生物学的製剤(クリニックで認定施設は福岡県内で当院が最初です)など多数行っています。乾癬の治療手段はすごくたくさんあるのですが、うまくいっていない方はとても多いです。治療がうまく行かないときはしっかり見直し、次の手段も考えましょう。良い効果を出したい場合は、化粧品にコストをかけても乾癬は治りませんから、治療にコストをかけたほうがうまくいきます。

当院では全身型光線治療機器を導入しています。その他にもセラビーム308slim、TARNABとターゲット型治療機を揃えていますので、乾癬への光線療法は十分行える環境になっています。院長がinspire Tシャツでお迎えする日もあります(たぶん)。

色素沈着

乾癬が治ってもこれだけは残るんです、という方も多いです。刺激を与えないように気をつけ、治療を行いましょう。寛解を維持できれば、徐々に薄くなってきます。外出時の日焼け止めや、塗り薬を擦り込まないように塗るのも予防のために大切です。大切なポイントですが、色素沈着はステロイドの副作用ではありません。ビタミンCを内服する、美白剤を塗るなどの対策は有効なときがあります。レーザーでの治療をするときもありますが、乾癬の方はできるだけ刺激を避けたほうが良いので、まずは改善をじっと待つほうが、よい結果が出やすい印象があります。

メソアクティス 当院では乾癬で色素沈着が気になっている方への改善策としてよく使用します。ビタミンCやアルブチン(美白剤)、シワ対策としてのアルジルリン、ヒアルロン酸などいろんな薬剤を効率よく導入できます。

乾癬の治療でも問題はおこります!

皮膚の毛細血管拡張

ステロイドを塗る方の、特に顔に多く見られる副作用です。ステロイド外用剤の減量ないし中止が重要になります。毛細血管拡張は徐々に改善するのですが、鼻まわりや頬などの血管が気になり、早く治したい場合はダイレーザーやロングパルスNd:YAGレーザーなどでの治療が可能です。当院ではロングパルスNd:YAGレーザーで治療しています。

キュテラXEO シミ治療のライムライト、アキュティップ、プロウエーブLXを用いた脱毛、表皮の毛穴、小じわ、ハリ対策のジェネシス、ロングパルスNd:YAGレーザーを用いた血管病変や毛細血管拡張の治療など色々なお悩みに「乾癬があっても」対応しています。

皮膚のしわ

年齢によって出てくるシワ以外にも、ステロイド外用剤を長期に塗ることで皮膚が薄くなる副作用が出てきます。ステロイドの中止で改善しますが、時間がかかります。日常的なケアが大切になります。毎日の日焼け止めは必須です。レチノール入りのクリームなどを使ってケアしていくことも役立ちます。擦らないことや保湿も大切です。表情シワなどにボトックスを使用することも可能です。

ムダ毛

スネ、腕などステロイド外用剤を長く使うとムダ毛が濃くなってくることがあります。中止で改善しますが、気になる場合は脱毛が可能です。ムダ毛処理をする際にカミソリで剃ることも多いですが、なるべく優しく行いましょう。脱毛は医療機関で行いましょう(絶対)。乾癬に理解のある皮膚科専門医がいる施設で行うのがベストです。当院では乾癬患者さんへの脱毛を行っていますが、Köebner現象(刺激による乾癬の悪化)は全く経験していません。乾癬が脱毛後に発症した報告が1例(Garg S, et al: Dermatol Surg. 2018 Apr;44(4):602-603. )ありますが、それ以外に乾癬が悪化した例などは文献上も見つかりませんでした。

乾癬患者さんが安心して使える医療脱毛。
当院で下肢の脱毛処置をしている患者さん 左:開始前 右:脱毛2回施行後。治療途中ではありますが減毛しており、乾癬が悪化していないこともわかります。

シミ

シミと一言で言っても色々な要素があります。予防としては日焼け止めが大切です。できてしまったシミは、シミを取ろうと思っている施設が別にあるとしてもまず一度乾癬を診てくれている主治医に相談しましょう。私も経験がありますが、「シミを取ってほしい」と受診された方のシミが皮膚癌だった、ということもあります。取る、取らないの前に何ができているのかを皮膚科専門医の目で確かめましょう。シミ(老人性色素斑)だけでなく、そばかす、ホクロ、肝斑など色んな種類のものをちゃんと見極め、かつ乾癬を悪化させないように治療しなければなりません。

Qスイッチルビーレーザー 「シミ」の治療には効果が一番高い機器です。現在30人以上の乾癬患者さんへのシミ取りを行ってきましたが、処置による乾癬の悪化はありません。

乾癬患者さんがやらないほうが良いもの

正常の皮膚であっても刺激を与えるような処置は乾癬の新しいブツブツを作ってしまうことがあります。これをKöebner(ケブネル)現象と呼びます。また、乾癬の病変に刺激を与えることで悪化する懸念もあります。乾癬患者さんへの美容医療を行う際、この視点を忘れてはいけません。こする、引っかくというような刺激がKöebner現象のきっかけになることはよく知られています。一方、38人へのレーザー治療でKöebner現象が見られなかった、という報告もあります(Sachsman SM, et al: Dermatol Surg. 2016 Apr;42(4):521-5.)。

マッサージ

顔のコロコロはそもそも効果ありませんし、強い力でのマッサージは逆にシワやたるみの原因になってしまうこともあります!

アカスリ

(ダメ!ゼッタイ!)乾癬患者さんは刺激に反応してしまいます。ケブネル現象と言って、刺激を受けた部分に乾癬ができてしまうことがあります。

美容に迷っているあなたへのメッセージ

巷にはいろんな美容法が溢れており、ネットで調べると色々魅力的にみえるものがたくさん出てきますが、流されないことも大切です。地味でも刺激の少ない、効果がしっかりと分かっているものがおすすめです。当院でも色々な施術を行っていますが、それに伴い乾癬が悪化したことはまだ一度もありません。

乾癬だから、こんな処置を行うなんておこがましい、なんておっしゃる患者さんもおられます。そんな気持ちにならなくて結構です。「乾癬ですが、何か?」くらいの気持ちで大丈夫です。ただし、いちばん大切なことは乾癬をしっかりコントロールすることですから、シミが気になっていても乾癬の治療を優先することもあります。そして、何度も言っていますが、日常生活では掻かない、こすらない、むしらない!