光線療法とは

昔から、日光浴をすることで乾癬がよくなったり、アトピー性皮膚炎のかゆみが改善することは知られていました。紫外線は皮膚の中での免疫反応やかゆみに関わる反応を和らげることが可能です。その歴史的背景からいろいろな研究がなされました。古くは、乾癬のゲッケルマン療法があります。また、PUVA療法といってソラレンという光感受性物質を塗る、もしくは内服するなどしてUVAを当てる治療も開発されました。ソラレンの使用に注意が必要なため大学病院など限られた施設で行われています。2000年前後には、311nmという限られた波長が出されるTL-01というランプがフィリップス社より開発され、それを用いたナローバンド UVB療法が日本にも入ってきました。院長はこの治療法に興味を持っていたため表皮細胞に照射した際の細胞生物学的な影響を調べる研究や、機器の使用法についての臨床的な研究を行ってきました。その経験もあり、光線療法の魅力にとりつかれてしまいました。そのため、医院を継承してからも当院では、光線療法を積極的に行っています。

健康保険が適用され、3割負担で1000円程度です。
適応となる疾患は、乾癬、白斑、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、掌蹠膿疱症、慢性苔癬状粃糠疹、類乾癬、リンパ腫、菌状息肉症です。
当院では全身型ナローバンドUVB照射装置1台(Daavlin 3 NeoLux)、エキシマランプ (セラビーム UV308 slim)、ターゲット型ナローバンドUVB照射装置1台(TARNAB)を用いています。

当院での取り組みが評価され、医師向けに光線治療機器の使用法を全国各地で毎年レクチャーしています。また、多くの見学者を受け入れています。

光線療法はなぜ効くの?

光線療法は、標的細胞のアポトーシス、サイトカインやケモカインの調整、抗原提示能の調整、制御性T細胞の誘導、かゆみの改善など様々なメカニズムから効果を発揮します。

光線療法のよいところ

塗り薬、飲み薬以外の治療手段を持つことができる

光線療法を行うことで、塗り薬や飲み薬だけで治しにくかった皮膚症状の軽減ができる場合もあります。特に、アトピー性皮膚炎や乾癬の患者さんは塗り薬を長年塗っていて副作用でお困りのことも多いです。塗り薬の副作用対策として光線療法を用いることで塗り薬の使用量を減らすことが可能です。

かゆみにも効果を出すことができる

光線療法は、かゆみをおこすきっかけになる免疫担当細胞の働きを弱めることで皮膚炎が改善します。それだけでなく、かゆみを感じるもとになる神経線維が表皮の浅いところに入ってこようとするのを防ぐ働きがあることが示されています。つまり、かゆみそのものに光線療法が効果を出す、ということです。

大切な治療選択肢

白斑や円形脱毛症など、治りにくく治療選択肢が少ない皮膚疾患は未だに存在しています。これらの疾患でお困りの方の大切な治療選択肢として光線療法は重要な役割があります。

当院で扱っている照射装置

全身型ナローバンドUVB照射装置 Daavlin3 NeoLux

全身型の光線治療器です。311 nm の波長を出すTL-01というランプを搭載したNarrowband-UVB照射装置です。立ったままの姿勢で照射することが可能です。広い範囲に病変がある方に向いています。最新式のモデルで、福岡県初導入らしいです!

セラビームUV308 slim

308 nmの波長を出すエキシマランプが搭載されています。照射率が高いため短い時間で治療を行うことができます。日焼けなど有害な反応を起こすリスクが高い短い波長の光はエキシマフィルターでカットしているため、比較的安全に治療ができます。

TARNAB

国内で新しく独自に開発された、312nmの波長の平面光源をもつ光線治療器です。赤みや色素沈着などの副作用が最も少ないことが特長です。 また、100V電源に接続可能であること、小さい機器であることより、往診に持参することも可能です。

在宅光線療法という、新しい治療概念が始まるかもしれません。光線療法はまだ色々進化していきます。

機器を適材適所で使うことが大切


多くの機器を用意している理由は、以下の2つです。効果と安全性をそれぞれ重視しているためです。

治療効果:治りにくい場所、当てにくい場所に適切な治療を行うためです。

副作用対策:副作用としては、強く当てた部分の赤みやヒリつき、長期間の照射で日焼けのような色素沈着が起こります。セラビームはエキシマフィルターが付属しているため、エキシマランプの中では副作用が起こりにくい仕組みを持っています。TARNABは赤みや色素沈着が特に起こりにくい312nmという波長の光を出す機器です。これらの治療を長いこと行っていると、安全性が高い機器を使うことは、患者さんにとって非常に大きなメリットがあることを痛感します。特に、新しく光線療法を始めようとする皮膚科医にもこのことを強調してお伝えしています。