ニキビは青春のシンボルと言われ、一時的な生理現象と思われています。しかし、ニキビは適切な治療を早期に行わないとニキビ跡を残してしまう、慢性炎症性皮膚疾患です。
にきびの最初の症状は、面皰(めんぽう)という皮脂が毛穴にたまった状態です。毛穴の先が閉じている白ニキビと、毛穴の先が開いている黒にきびがあります。その面皰が炎症をおこすと赤ニキビとなり、さらに炎症が進むと膿がたまります。
ニキビ治療は2段階で考える
治す戦略は2つに分かれます。赤ニキビや黄ニキビが主体の急性炎症期、炎症が落ち着いたあとの白ニキビや黒ニキビを中心とした面疱を治療する維持期です。
急性炎症期(炎症性皮疹が主体)
ニキビの急性期治療は、赤ニキビや膿を伴う炎症性皮疹が中心となる時期に行われる、最も重要な治療ステージです。この時期の皮疹は、毛包内でアクネ菌が増殖し、強い炎症を引き起こしている状態であり、適切な対処を怠ると、瘢痕(ニキビ跡)や色素沈着といった後遺症を残すリスクが高まります。そのため、早期に炎症を抑え、皮膚のダメージを最小限に食い止めることが急性期治療の最大の目的です。
治療には、過酸化ベンゾイルやアダパレンなどの外用薬に加え、症状が強い場合にはミノサイクリンなどの内服抗菌薬も併用されます。これにより、アクネ菌の増殖抑制と毛穴詰まりの解消が同時に行えます。単に見た目を整えるためだけでなく、慢性化や瘢痕形成を防ぐためにも、急性期の段階で専門的かつ積極的な治療を行うことが非常に重要です。適切な介入により、患者のQOL(生活の質)を大きく改善し、将来的な皮膚トラブルを予防することが可能となります。
症状の特徴
- 赤ニキビ(丘疹)
- 膿ニキビ(膿疱)
- 進行すると硬結(しこり)や嚢腫(のうしゅ)を形成することもある

この時期の治療の目的
- 炎症の沈静化
- 瘢痕(ニキビ跡)の予防
- 痛みや腫れの軽減
推奨される治療
外用療法
- 過酸化ベンゾイル(BPO)
アクネ菌を殺菌+角質剥離作用 - アダパレン
面皰(めんぽう)形成の抑制 - 抗菌外用薬(クリンダマイシン・ナジフロキサシンなど)
ただし、単独使用は推奨されず、面皰治療薬との併用が基本となります。
内服療法(中等度以上)
- テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリン)
→ 炎症の強い場合に3ヶ月以内の短期間使用 - 漢方薬(十味敗毒湯、清上防風湯など)
体質改善を目的とした補助療法
維持期(面皰が主体)
ニキビの維持期治療は、急性期の炎症が落ち着いた後、白ニキビや黒ニキビ(面皰)が主体となる時期に行う重要な治療段階です。症状が軽く見えるため治療を中断しがちですが、実際にはニキビの再発や慢性化を防ぐための“根本治療”として非常に大切です。毛穴の詰まりは、炎症性ニキビの前段階であり、放置すれば再び赤ニキビが形成されてしまいます。
この時期には、アダパレンや過酸化ベンゾイルなどの外用薬を継続的に使用し、毛穴内の角化異常を正常化させることが基本です。抗菌薬のような即効性はないものの、時間をかけて肌質を整え、「ニキビができにくい肌環境」を育てていきます。また、洗顔や保湿などのスキンケアも併せて見直し、刺激や乾燥を避けることが治療の一環となります。
維持期治療を怠ると、せっかく改善した肌が再び悪化し、治療の振り出しに戻ってしまうこともあります。したがって、この時期の治療は「終わり」ではなく、「予防と安定化」のフェーズであり、継続こそが将来の美肌への近道です。
症状の特徴
- 白ニキビ(閉鎖面皰)
- 黒ニキビ(開放面皰)
- 目立ちにくいが、炎症ニキビの“もと”となる段階

この時期の治療の目的
- 新たな炎症性皮疹の予防
- 面皰の除去と再発防止
- 治療効果の維持
推奨される治療
外用療法(長期継続)
アダパレン(ディフェリンゲル)
角化を正常化し、面皰形成を抑制
過酸化ベンゾイル(ベピオゲル、ローション、ウォッシュゲル)
抗菌+角化抑制作用の両方を持つ
アダパレン+BPO(エピデュオゲル)
面皰と炎症両方に対応
スキンケアと生活習慣の改善
- 刺激を避ける洗顔をおこない、保湿はさっぱりと仕上げる
- 紫外線対策、脂質の多い食事の見直しなど
維持療法の意義
- 炎症が消えても、面皰が残っていれば再発リスクは高い
- 無症状でも治療継続が必要
- ガイドラインでは「最長12ヶ月までの維持療法」が推奨されます。
一番大切なものは全部の期間で使うアダパレン、過酸化ベンゾイルという塗り薬です。これらを基本として抗菌薬を急性炎症期の間だけ使用します。ニキビ菌(C. acnes)の耐性化が世界的に問題になっています。抗菌薬の適切な使用は、あなたの治療だけではなく、ニキビになる未来の患者さんにも役立つことでしょう。
当院では維持期を意識して塗り薬を正しく使うことを重視しています。半年以上しっかりと毛穴を治療していくことで、ニキビがない肌を維持すること、そして将来のニキビ跡をしっかり予防していきましょう。
ニキビは病院で治療しましょう!