目元のシワは鏡を見ると気になるものです。20-30台の若い世代の方でも、急に目元のシワが気になってくる方を最近良く見かけます。そんなとき、シワ対策として何を選んでよいか迷うことがあると思います。
特に、アトピー性皮膚炎の患者さんには目元にシワが見られます。これをDennie-Morgan’s foldと呼びます1)。花粉症の時期などに目をこすることなどで悪化する事が多く、化粧品会社などが乾燥シワと紹介していることも多いです。ドラッグストアなどで購入した保湿剤やシワ取り用のクリームは、最近では優秀な製品が増えてきたのですが、残念ながら皮膚炎がある場合は効果を出すことはできません。
目元のシワが見つかりやすいアトピー性皮膚炎
目元のシワ Dennie-Mrogan’s fold は内因性アトピー性皮膚炎で多いと言われています2)。
アトピー性皮膚炎は、主に皮膚のバリア機能が衰え、その結果生じるアレルギー反応などが主な要因なのは、よくご存じの事と思います。内因性アトピー性皮膚炎はニッケル、コバルトなどの金属に対するアレルギーが多いことも知られています3)。また、IgEが低い正常値であることも知られています。
金属アレルギーのある内因性アトピー性皮膚炎の患者さんの一部は、パッチテストを行い、反応があった金属が含まれた食事を制限することで症状が改善することがあります。
内因性アトピー性皮膚炎はpseudo-atopic dermatitis (偽性アトピー性皮膚炎??)や、atopiform dermatitis (アトピー様皮膚炎??)という診断名をつけたい、というグループもあります。 診断名に関しては国内外で議論されています。
目元のシワはどう治療したらいいの?
このシワは皮膚炎によるシワですので、保湿だけでは治りません。ステロイド、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストなどの抗炎症外用薬を必要とします。
目の周りにステロイド外用薬を塗るときには、緑内障の発生に注意しなければなりません。顔面へのミディアムクラスのステロイド 5g/月程度の使用量では眼圧上昇の原因にはならないとの報告4)があります。しかし、漫然と目の周りにステロイドを塗るべきではないため、改善してきたらタクロリムスやデルゴシチニブなど、眼圧に影響を与えない塗り薬を使っていくようにしましょう。
目元のシワが急に悪くなってきました。乾燥シワと思って保湿しても良くなりません。
そんなときは一度お近くの皮膚科を受診してみてください。皮膚炎をみつけ、治療することも大切な選択肢だと思います。
気をつけたい目元のシワ対策のNG習慣
目元のシワ対策として、「余計な刺激を与えない」ことを注意しましょう。肌のバリア機能を保つためにやさしく扱うことを心がけましょう。
①こする クレンジングや洗顔で肌をこするように洗う、花粉症などで目のかゆみがある時、ゴシゴシしてしまう
②たたく 化粧水などをパッティングする
③マッサージ 引っ張ったり、強い力でマッサージすると目元の薄い皮膚には大きなダメージになります
アトピー性皮膚炎と眼の症状
目元のシワ以外にも、アトピー性皮膚炎の患者さんが眼の周りの症状でお悩みになることは多いです。日本眼科医会のページは良くまとまっていておすすめです。
アトピー性白内障
アトピー性皮膚炎のある方が眼の周りを叩いたりこすったりすることが原因と考えられています。ステロイドを内服しているとステロイド性白内障のリスクも高まります。視力の低下が急に進行することも多いとされます。
網膜剥離
顔のアトピー性皮膚炎がなかなか良くならない方に起こりやすいです。初期の自覚症状に乏しいこともあります。早期発見が大切なため、視力低下が気になる方は早めに眼科で診てもらいましょう。
まとめ
目元のかゆみを伴ったシワは、皮膚炎かもしれません。一度皮膚科にかかり、しっかり治療しましょう。普段のケアとして、こすらない、たたかない、マッサージしないの3つは大切です。眼の周りに症状が続いているアトピー性皮膚炎の患者さんは、眼科医の診察を受けてみることも大切です。
参考文献
1. Morgan DB. A suggestive sign of allergy. Arch Derm Syphilol 1948;57:1050.
2. Brenninkmeijer EE, Spuls PI, Legierse CM, Lin- deboom R, Smitt JH, Bos JD. Clinical differences between atopic and atopiform dermatitis. J Am Acad Dermatol 2008; 58: 407―14.
3. Yamaguchi H, Kabashima-Kubo R, Bito T, Sakabe J, Shimauchi T, Ito T, et al. High frequencies of positive nickel/cobalt patch tests and high sweat nickel concentration in patients with intrinsic atopic dermatitis. J Dermatol Sci 2013; 72: 240―5.
4. 有川 順子, 檜垣 祐子, 高村 悦子, 川島 眞. アトピー性皮膚炎患者の眼圧と顔面へのステロイド外用療法との関連性についての検討. 日本皮膚科学会雑誌 2002; 112: 1107-10.
この記事を書いた人
アトピー性皮膚炎の患者さんの診察をする時、目元に注目することも多いんです。目元のシワからアトピーがあることに気づくこともあります。せっかくなので、目元のシワをきっかけに皮膚炎を見つけ、しっかり治療してはいかがでしょうか。
下のボタンよりSNSに記事をシェアしていただけると幸いです。