アトピー性皮膚炎に対する薬剤はここ数年で目覚ましい進歩をとげています。塗り薬、飲み薬、注射薬がどんどん増えてきたため、今までの治療でうまくいかなかった方にも良い効果をあげることが可能な時代になりました。このたび、新しいIL-13をブロックする注射薬が登場しましたので、紹介します。

アドトラーザとは

アドトラーザの有効成分はトラロキヌマブといい、IL-13を選択的に阻害するヒト免疫グロブリンIgG4モノクローナル抗体であり、IL-13がその受容体に結合するのをブロックします。IL-13は下に示すようにアトピー性皮膚炎の病変ができ、慢性化していくのに重要な働きをしますので、IL-13をブロックするのは合理的と考えられます。

IL-13の働き

アトピー性皮膚炎の病変が持続するために重要な働きをするのが、Th2細胞というリンパ球です。Th2細胞はIL-13やIL-4を産生することで皮膚のバリア機能低下、抗菌ペプチドの産生低下、IL-31というかゆみに関連するサイトカインの産生などを起こしてアトピー性皮膚炎の特徴的な病変を作ります。IL-13はIL-4と似た働きをしていますが、アトピー性皮膚炎の病態が作られる上で、IL-4よりIL-13のほうがより中心的な働きをしていることが知られています。また、線維化に関しても重要な役割を果たすことが分かっており、アトピー性皮膚炎の慢性病変では苔癬化という皮膚がゴワついた感じになる病変ができますが、それにもIL-13の働きが重要であることが分かっています。

IL-4をブロックしたほうが良いのか、しないほうが良いのか、様々な議論がありますが、実際のところはよくわかっていません。

アドトラーザの効果

ステロイド外用剤併用下で、16週間トラロキヌマブを投与することでEASI(eczema area and severity index, 皮膚炎の重症度指標)が75%減少した患者さんの割合、EASI75は56.0%でした。塗り薬だけの患者さんは35.7%でした。

レオファーマ社のサイトより引用、参考文献1

アドトラーザの適応

従来の治療(ステロイド外用剤など)で十分な効果が得られない15歳以上のアトピー性皮膚炎患者さん

アドトラーザの使い方

アドトラーザはシリンジ製剤で、初回4本、その後2週間隔で2本を皮下注射します。現段階では長期処方ができないため自己注射はできません。

レオファーマのサイトより引用

Q&A

発売はいつごろでしょうか?

2023年9月26日に発売されました!

デュピクセントなど今までの薬と比べて効果は違うのでしょうか?

わかりません。実際の使用経験、薬価などをもとにこの薬剤の使い方が定まってくると思われます。

参考文献

  1. Silverberg JI. et al.:Br J Dermatol 184(3), 450-463, 2021