ソーティクツ錠とは
世界初の経口TYK2阻害薬です。2022年11月16日に発売開始されました。この薬は、日本皮膚科学会認定分子標的薬使用承認施設で処方することになっています。当院は承認施設ですので、他のクリニックで治療がうまくいかなかった患者さんや重症の乾癬患者さんの治療を行っています。そのような患者さんにとって新しい治療選択肢ができたことは喜ばしいです。当院でもこの薬剤を処方しています。
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ソーティクツ錠のメカニズム
TYK2とは
TYK2はチロシンキナーゼ2といい、JAK(ヤヌスキナーゼ)1,2,3と並んでJAKファミリー分子の一つと言われます。インターフェロンαなどの乾癬の発症に役割を果たす1型インターフェロンや、IL-12やIL-23といった乾癬の症状の形成や維持や重要な働きをするサイトカインの働きをブロックします。
ソーティクツ錠がTYK2をブロックするメカニズム
デュークラバシチニブはTYK2に2つある結合部位のうち、シュードキナーゼドメインに結合することで、キナーゼドメインの立体構造を変化させ、ATPの結合を妨げてTYK2の活性化を阻害します。
TYK2はIL-12やIL-23受容体に結合していますのでIL-23の働きをブロックすることで、乾癬の症状を起こすための核となるサイトカインであるIL-17の産生を妨げます。その結果乾癬の病変の改善につながります。
ソーティクツ錠の効果
ソーティクツ錠の効果は、中等症から重症の尋常性乾癬患者を対象とした国際共同臨床試験の結果で示されています。
投与16週間でのPASI 75 (乾癬の重症度スコアが75%改善した)達成率は58.4%(プラセボ 12.7%)と非常に高い効果を示しています。生物学的製剤にも匹敵する効果を認めています1。
参考文献1より引用
ソーティクツ錠の使い方
参考文献2より引用
効能または効果
既存治療で効果不十分な下記疾患
尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症
以下のいずれかを満たす尋常性乾癬、膿疱性乾癬又は乾癬性紅皮症の患者に投与すること。
光線療法を含む既存の全身療法(生物製剤を除く)等で十分な効果が得られず、皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ患者
難治性の皮疹又は膿疱を有する患者
用法及び用量
通常、成人にはデュークラバシチニブとして1回6mgを1日1回経口投与します。
ソーティクツ錠を投与できない人・注意が必要な人
禁忌
重篤な感染症がある方
活動性結核がある方
ソーティクツ錠の成分に過敏症の既往がある方
特定の背景を有する患者さんに関する注意
感染症(重篤な感染症又は活動性結核を除く)の患者さん、感染症が疑われる患者又は再発性感染症の既往歴のある患者さん:感染症が顕在化するおそれがあります。
重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)がある方:できるだけ投与を避ける必要があります。やむを得ず投与する場合は副作用の発生に注意が必要です。
妊娠中の方:治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与します。
授乳中の方:治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討することが必要になります。
小児には臨床試験が実施されていません。
事前に必要な準備、投与中の注意点
日本皮膚科学会の分子標的薬使用承認施設に限定した使用となっています。当院はもちろん承認施設です。投与前に感染症を中心としたスクリーニング検査を行う必要があります。投与中も副作用の有無をモニタリングしていく必要があります。また、ソーティクツ錠投与中は生ワクチンの投与はできません。コロナウイルスワクチンは投与可能です。帯状疱疹ワクチンはシングリックスのみ投与可能です。
ソーティクツ錠の気になる薬価
1日薬価 2,770.90円
30日薬価 83,127円
3割負担 24,938円
2割負担 16,625円
1割負担 8,312円
参考文献
1 Armstrong AW et al: Deucravacitinib versus placebo and apremilast in moderate to severe plaque psoriasis: efficacy and safety results from the 52-week, randomized, double-blinded, placebo-controlled phase 3 POETYK PSO-1 trial. J Am Acad Dermatol. 2022 Jul 9;S0190-9622(22)02256-3. doi: 10.1016/j.jaad.2022.07.002. Online ahead of print.