この記事を書こうと思った理由
保湿はスキンケアにおいていちばん大切なことの一つです。当院でも保湿は大切であることを何度もお伝えしています。ただし、ニキビについては必ずしもそうじゃありません。ニキビがある方は保湿は盲目的に行うべきものではありません。
当院はニキビで毎日多数の患者さんが受診されます。今まで自分で対策を頑張っていて、うまくいかないので病院に初めてかかるような方が多いです。そんなニキビの患者さんからは、
「保湿を頑張ってたのに、ニキビが良くなりません」
と言われることが多いです。どうしていいかわからず涙される方もいます。そんな方と向き合っている時、ニキビを治そうと思って一生懸命だったんだろうな、と思うと少し悔しい気持ちになります。そこで、色々と調べてみました。
ネット上で「ニキビ」と「保湿」で検索すると正直何が何だか分からないカオスになっています。保湿の重要性を解説している、というよりもほとんどが商品の紹介です。結局何が大切なのか検索して調べるだけではわからなくなってしまいます。
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世間のニキビに対する保湿の考え方を知りたい
そのような背景があるため、ニキビで困っている人たちはどんな気持ちで保湿しているのか、twitterでアンケートをとってみました。
「ニキビの治療で一番大切なのは何でしょうか?」
とシンプルに尋ねてみました。すると、このような結果が得られました。
これに賛同された小林智子先生も、同じアンケートをとってくださいました。
いろいろな宣伝の結果なのか、保湿大好きな国民性なのか、理由はよくわかりませんが多くの方が「保湿はニキビの治療で一番大切」と考えておられるようです。皮膚科医の願いとしては、アダパレン and/or 過酸化ベンゾイルが一位になってほしかったと思っています。
ニキビへの保湿
ニキビのある人が保湿することは、いけないことではありません。ただし、保湿だけではニキビを治せません。
ニキビに対して、保湿性のある化粧品で改善効果を示す研究結果はいくつもあります。含まれている抗炎症成分、抗菌作用、ピーリング作用のある成分の効果を考慮しなければなりません。しかし、保湿単独で治療効果を示した報告はありません。
ニキビの本質は毛穴の詰まり、すなわち面疱(めんぽう)です。これが毛穴の渋滞をひきおこし、毛穴に皮脂がたまります。そうして皮脂を好物にしているニキビ菌(C. acnes)が増殖して炎症を起こす、という一連の流れがニキビの(大まかな)成り立ちです。保湿しすぎると、ニキビ菌にとっては皮脂でお腹いっぱいになっている所に保湿の「別腹」が入って来る状態です。
保湿のよいこと 皮膚のバリア機能を整える
保湿のよくないこと 毛穴をつまらせる 皮脂を増加させる
まずニキビを治すためにやること
「早く皮膚科に行きましょう!」「毛穴の詰まりを治療しましょう!」
ニキビは治療が必要な皮膚の病気です。適切な時期に治療しないと跡を残してしまいます。毛穴を治療する、すなわち面疱(めんぽう)治療がニキビを治すためにとても大切です。面疱治療をしっかり継続的に行うことで、ニキビ跡を予防する効果があることも証明されています。
以前は十分な治療薬がないため皮膚科としてのもどかしさがあり、それがガイドラインにも記載されています。
尋常性痤瘡は,アクネあるいはニキビとも呼称される,思春期以降に発症する顔面,胸背部の毛包脂腺系を場とする脂質代謝異常(内分泌的因子),角化異常,細菌の増殖が複雑に関与する慢性炎症性疾患である. 本邦では 90%以上の人が経験する疾患であることから,「ニキビは青春のシンボル」と言われ,生理的現象として軽視され,皮膚疾患としての認識が十分ではなかった. そのため,医療機関を受診する痤瘡患者は 10%に過ぎず,受診した患者の治療に対する満足度も十分とはいえなかった.
林伸和ほか:尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017 日皮会誌:127(6),1261-1302,2017 より引用
ニキビがある人で、保湿したほうがよい状態は?
お薬を使って乾燥している方(特にエピデュオ、ベピオ、ディフェリン、デュアックなど面疱を治療する薬)
アトピー性皮膚炎のある方
朝お肌がつっぱるくらい乾燥している方
どんな保湿がいいの?
保湿は、シンプルに油分の少ないものを使うことが大切です。迷ったら、減らすほうが良いです。また、何種類も保湿用のアイテムを使わないことも大事です。
「ニキビは引き算」です!ニキビが治らないときに保湿を頑張らないことも大切です。
保湿をする場合は、なるべく「ノンコメドジェニック」の製品を使いましょう。ただし、ノンコメドジェニックテスト済でも、ニキビができないわけではありません。ベッタリ塗りすぎるとニキビが悪化してしまいます。
残念ながら、すべてのニキビにおすすめの保湿はありません。ひとりひとりの肌質、ニキビの状態、ライフスタイルは異なるからです。そのため、他の人が使って良かったものが全然うまく行かないことも多く見られます。少しずつ試しながらですが、自分にあった保湿を見つけてみてください。
まとめ
保湿はニキビを治すものではありませんが、自分にあった保湿はニキビの改善や予防には役に立ちます。
そして、ニキビができたらできるだけ早くお近くの皮膚科で治しましょう!
一つだけ知っておいてほしいことがあります。皮膚科医は、あなたのニキビを治したいんです!
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