アトピー性皮膚炎の治療にも出口戦略が重要です。治療の目標は、症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持することです。そこまで到達できないときでも、できる限り軽い状態を維持することを目指していきます。「塗ってるときはいいけど、塗らないとすぐに出てくる」のはよくないです。
治療方法の3本柱は薬物療法、スキンケア、悪化因子の検索と対策です。

ADアルゴリズム
アトピー性皮膚炎の治療アルゴリズム。治療の目標、すなわち寛解を強く意識したアルゴリズムの設計になっています。寛解維持にプロアクティブ療法が記載されていることもポイントと思います。ステロイド外用薬を使うことは役に立ちますが漫然と使うべきではありません。また、重症の方でデュピルマブを使っているからといっても塗らなくていいわけでもありません。当院ではガイドラインを重視しますが、治療内容は基本的に患者さんごとのカスタマイズされた方法を提案します。

薬物療法 

塗り薬

ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、デルゴシチニブ外用薬、ジファミラスト外用薬を用います。

塗り薬はFTU (finger tip unit)を考えて使用します。やさしく、すりこまないように塗るのが大切です。

当院ではステロイド外用薬を使わなくても良い状態まで改善させることを、治療目標の1つにしています。しかし、脱ステロイド療法という考え方は単なる治療放棄に過ぎませんので、当院では絶対行いません。

飲み薬

抗ヒスタミン薬をかゆみ止めとして使うことが多いです。内服JAK阻害薬であるバリシチニブ(オルミエント)、ウパダシチニブ(リンヴォック)、アブロシチニブ(サイバインコ)がアトピー性皮膚炎の治療薬として使用できるようになりました。多くの治療薬が登場して、重症な方にも治療がお届けしやすくなりました。ときにシクロスポリンを用いることもあります。長期間使用で血圧上昇や腎臓への負担がかかりますので短期間の使用が望ましいです。

光線療法

当院ではナローバンドUVB照射装置やエキシマランプを用いて光線療法を行っています。痒みの強い部分には特に効果を発揮してくれます。ステロイドなど塗り薬の使用量を減らすことにも役立ちます。

注射薬(生物学的製剤)

デュピルマブ(デュピクセント)が使用できます。当院は生物学的製剤を使用できますので、他の皮膚科医院や病院皮膚科から治りにくいアトピー性皮膚炎の患者さんをよくご紹介いただきます。痒みや皮膚症状はかなりコントロールしやすくなりました。2021年のガイドラインでは維持療法(寛解を維持するための治療)としても推奨されるようになりました。

スキンケア

 皮膚のバリア機能および保湿因子を回復させることがスキンケアの大切な目的です。当院では、スキンケアを重視しており、指導にもスタッフ一丸となってかなりのエネルギーを割いています。特に、出生直後から保湿外用剤によるスキンケアを行うことは、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げることも知られています(Horimukai K et al: J Allergy Clin Immunol 2014)。アトピー性皮膚炎の治療を実践していく上で、スキンケアはどの状態のアトピー性皮膚炎であっても大切です。

この記事を書いた人

アトピー性皮膚炎はいろいろな治療法が進歩しています。ステロイド外用剤だけしか使っていない方、治療がうまく行かない場合はご相談下さい。治療の最適化を一緒に考えましょう。