アトピー性皮膚炎患者さんの首には波目のような色素沈着が目立つことがあります。「アトピーだから仕方ない」、と思っているあなたに読んで欲しいと思います。首の色素沈着を改善させることは可能だからです。多くの方が悩んでいることは知っていますが、「首の色素沈着が気になる」と医師に話してくれることは少ないです。多くのアトピー性皮膚炎の患者さんに対し、毎日のように「ブツブツ消してしまおうよ」と言い続けていると、毎日の治療をしっかりやってくれて皮膚がツルッツルに改善される方もいます。軽度のアトピー性皮膚炎である私からみて、めちゃめちゃ尊敬します(毎日薬をマジメに塗っている方は、日々尊敬の目で見ているんです)。さらに、ここ最近の治療薬の進歩もあり、そんなツルツルになる状態が得られやすくなりました(寛解といいます)。しかし、そんな方でも残った色素沈着はどうしても気になります。ここ最近、患者さんからそんな悩みを多く聞きます。実は、この記事はある数人の患者さんからのリクエストでもあります。

首の色素沈着、呼び名があります。

アトピー性皮膚炎患者さんの首にできる色素沈着は世界中で多く見られるため、呼び名もできています。これを海外では”dirty neck”と呼んでいるのですが、個人的にこの呼び名が嫌いです。汚いわけではないからです。ripple pigmentation of the neck in atopic dermatitis、すなわちさざ波様色素沈着と言っている論文(Manabe T et al: Am J Dermatopathol 1987)もあり、そちらの言い方のほうが好きです。アトピー性皮膚炎患者さんの10%程度にみられる変化です。長い時間皮膚が荒れている状態の方に多くみられます。大半は炎症後色素沈着というもので時間と共に消えてくることが期待されますが、一部では組織学的色素失調といい、皮膚の真皮にメラニンが落ち込んでいる状態もみられることがあります。このような状態では、待つだけではなかなか治りにくい事が想定されます。

アトピー性皮膚炎患者さんの頚部にみられる色素沈着

色素沈着の治療について、データから分かってきたこともあります。

ハイドロキノン

美白剤として有名ですね。

ハイドロキノンと0.3%吉草酸酢酸プレドニゾロン軟膏を外用し、有効であった報告があります(林伸和 ほか:西日本皮膚科, 2000)

タクロリムス

よく使われているプロトピック軟膏のことです。

6ヶ月の間ステロイド外用剤に抵抗性を示したアトピー性皮膚炎の患者さんに3-6ヶ月の外用を継続し、首の色素沈着を画像解析した結果、有意な改善効果が得られたようです(Hira K et al: J Am Acad Dermatol 2004)。

Qスイッチルビーレーザー

シミの治療機器として当院でも大活躍しています。

10例の患者の頚部色素沈着にQスイッチルビーレーザーを照射し、全例有効であった。最長2年10ヶ月再燃しなかったとのことです(松永るり ほか:日本皮膚科学会雑誌, 2010)。

多くの検討で、効果を出せることがデータ上も分かっています。何よりも大切なことはやはりアトピー性皮膚炎をしっかり治療することが重要になります。

当院で行っている治療について

皮膚炎のしっかりとした治療

ここが大切です!

アトピー性皮膚炎の治療3本柱は、「薬物治療」「スキンケア」「悪化因子の検索と除去」です。色素沈着を治すためにも、アトピー性皮膚炎の改善が何よりも大切です。皮膚炎が長く続けば色がより取れにくくなります。

アトピー性皮膚炎の治療にも出口戦略が重要です。治療の目標は、症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持することです。

塗り薬

ステロイド外用剤、タクロリムス(プロトピック)外用剤、デルゴシチニブ(コレクチム)外用剤、ジファミラスト(モイゼルト)外用剤、これがないとうまくいきません。

保湿薬

治療および寛解維持にスキンケアは欠かせません。

飲み薬

JAK阻害薬 オルミエント(バリシチニブ)、リンヴォック(ウパダシチニブ)、サイバインコ(アブロシチニブ)の3種類があり、高い有効性があります。シクロスポリン(ネオーラル)は短期間使うことが推奨されています。

注射薬

デュピルマブ(デュピクセント)、ネモリズマブ(ミチーガ)は当院でも使用しています。

光線治療

ナローバンドUVB, エキシマランプを組み合わせ、皮膚炎をしっかり治療します。

薬の塗り方や日常的なスキンケアは医師、看護師からしっかりレクチャーし、最短で寛解に持っていくためのお手伝いをします。「痒くないのが当たり前な状態」まで持っていくのが理想です!そのためにはプロアクティブ療法がおすすめです。

色素沈着に関するアプローチ

皮膚炎が寛解できたら、色素沈着の治療に全力を注げます。もちろんこれらの治療をアトピー性皮膚炎の治療と並行して行うことも施術によっては可能です。

メソアクティス

メソアクティス エレクトロポレーション法を用いたビタミンC、美白剤アルブチンの導入や保湿としてヒアルロン酸の導入も可能です。皮膚が荒れていても使用可能です。色素沈着の治療とスキンケアを兼ねるため、当院では第一選択で使っています。

ZO skin health

ZO skin health ハイドロキノン + トレチノインをメインにした治療プログラムです。最初はヒリヒリしますが、首にも使えます。特に、皮膚炎があるときにトレチノインを含んだプログラムは難しいため、しっかり寛解してからの導入を強くおすすめします。軽度のアトピーがある院長の個人的経験からは、刺激感のため皮膚炎をしっかり治してから開始した方が良いと思います。当院ではカウンセリングを行ってから治療を開始しております。

Qスイッチ・ルビーレーザー

Qスイッチルビーレーザー 部分的に強い色素沈着がある方には第一選択です。真皮までレーザー光が届くため、他の治療でうまく行かなかった方には適応となります。ダウンタイムがあるので、広い範囲の照射には向いていません。特に、真皮までメラニンが落ち込んでしまった状態のときはこのようなレーザーが必要になります。

ジェネシス

ジェネシス ロングパルスNd:YAGレーザーの照射により皮膚の全体的なコンディションや赤味、毛細血管拡張も落ち着きます。首の症状や色素沈着も改善してきます。
  

注意点

ステロイド外用剤は色素沈着の副作用はありません。色素沈着を予防するためにも、荒れているときはしっかり十分量使いましょう。長く漫然と使用すると、毛細血管拡張が起こり、赤味が残りやすくなります。治療に関してはいつでも何度でも相談してください。

この記事を書いた人

長くアトピー性皮膚炎を患っておられる方にとって、首の色素沈着は大きくのしかかる問題になっています。とにかくアトピー性皮膚炎はしっかり寛解させていきたいですね。

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